黒と白の鍵合わせ

□Pray
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「いでてて・・・」
「俺はつかまらねぇぞ!オラッ立ちやがれ」
「のわっ!?」
転がった際に打った腰と肩に気を逸らしていれば男は無理矢理人の腕を掴み立ち上がらせ首筋に刀を押し付けてきた。このご時勢刀を持っているのは天人か攘夷志士の連中くらいだ。
「てめぇー人質取るとはいい度胸じゃねぇ・・・」
目の前に立ちはだかった人間はこの町のとりあえずお巡りさんである新撰組副長で人の顔を見れば嫌そうに眉間に皺を寄せた。その態度いい加減にして欲しいよ、これでも銀さんナイーブなんだからさぁ。
「おい、それ以上近付いてみろこいつの首を切り落としてやる」
「フッ、出来るもんならやってみな。ソイツが死のうと俺には関係ねぇからな」
瞳孔の開いた目でじっと犯人を見据えながら鼻で嗤えば益々男は逆上し刃を首に押し付けてくる。だが俺も黙ってされているわけに行かずほんの一瞬男の手元が緩んだのを見計らい刀を持つ手を捻り上げ腹に膝蹴りを食らわせた。
「ふぅ、酷いねェー警察が一般市民を助けるどころか人身御供に出すなんて・・・銀さん、多串クンの所為で汚されちゃった」
「だぁぁぁぁぁ、誤解を招く様なウソをつくんじゃねぇーーー!!」
「だって本当だしぃ」
ほれ、と見せた首筋には深くは無いが刀で切られた痕と血が滲んでいた。
「・・・」
この程度の傷であれば三日も掛からずに消えるだろう。ゴシゴシと手の甲で傷を擦っているといきなり土方に腕を捕まれ動きを止めた。
「ちょ、何だよ」
土方は首に巻いていたスカーフを外すと人の首に押し付けてくる。強い力がかかり苦しさに逃げようとするも掴んだ腕は離されておらずそう距離を作る事も出来ないままでいれば相手から舌打ちが聞こえた。
「お、おぃ・・・」
「手で拭ったって血は取れねぇだろうが」
「そんなこったねーぞ!」
「あれじゃ広げてるだけだ馬鹿が」
土方の言葉にムッとするも何故か自分の為にスカーフを汚し挙句拭ってくる事に驚きと気恥ずかしさもあってか黙り込み視線だけ彷徨わせた。
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