黒と白の鍵合わせ

□Pray
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お互い喋らなければ無言の空間が続く、けれど今の状況で何を喋って言いか思いつかない。一度当てていたスカーフが外されたがそのスカーフは今度は首元で巻かれ軽く締められるとどう反応していいか分からず相手の顔をじっと見つめてしまった。土方もその視線に気づくとあからさまに顔を逸らしまた舌打ちする。
「えっとぉ・・・」
「副長!此処にいらしたんですね。犯人の方は・・・あれ、万事屋の」
「・・・やぁジミー君」
「山崎です」
何時も土方たちと一緒にいる同僚の名前を間違えて口にすれば悲しそうに訂正を入れてくる。
「おい、山崎。そこに転がってる男がそうだ・・・連れてけ」
「はい」
未だに伸びたままになっていた男を後から来た隊士と一緒にパトカーに連行していくのをじっと見ているとフッと隣に立っていた土方が歩き出した。
「あ、多串く」
「土方だッ、いい加減人の名前を覚えろ」
眉間に皺を寄せ煙草のフィルターを噛みこちらを睨みつけてくるが本気で怒っているようには見えなかった。それ以上言葉を続けられずに居ると土方もそのまま別のパトカーに乗り込み行ってしまった。
残されたのはこの首にあるスカーフであの男の吸う煙草の匂いがした。




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