黒と白の鍵合わせ

□Pray
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それ以上散歩を続ける気も起きずさっさと家へと引き返してきた。たった数十分の事だったのに妙に疲れた気がする。
ゴロリと布団の上に横になると首に巻かれたスカーフが気になり手で弄る度に奴の匂いがして、誰かが傍にいる気がして荒立っていたものが落ち着いてしまう。あんな奴の匂いで落ち着く自分が恥ずかしくて仕方が無いと思うのにどうしてもその布を外す事が出来なかった。
そして目が覚めた時には既に日も明け外では鳥が煩く鳴いていたのだ。
「・・・朝・・・何時の間に寝てたんだ?んー・・・」
まだ寝たりないのか頭には靄が掛かったように上手く働かない。しかし今の着物のままでは寝にくいと動かない身体を動かし寝巻きに着替え直して布団に潜り込んだ。無意識にあのスカーフを握り締めたまま深い闇へと落ちていく。



「銀さん、怪我でもしたんですか?」
「へっ?」
「これ血が付いてるじゃないですか」
新八が差し出してきたのは所々に血が付いたスカーフ。あ、と思い出した様に自分の首に手をやるとそれに気付いた新八が「これですか?一体何やってたんです」と呆れたように呟きそれを持って脱衣所に向かっていった。
数時間前に起こった出来事を反芻すると非常に恥ずかしい以外のものはない。何時もは見せない土方の意外な優しさにむず痒いものを感じたがあの時の自分には癒しになっていた。
「返しにいかねぇとマズイよなぁ・・・」
ソファに凭れ掛かりながら会った時にでも返すかと小さく呟いた。



END


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