雑SS

□七夕への願い
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今は師と同じ様に二人の子供に挟まれて小さな丘の上からあの時と同じ星空を見
上げていた。
神楽はどこかで聞いてきたのであろう織り姫と彦星の話をしているが妙にサスペ
ンス的な話に変えられており新八が度々ツッコミを入れている。
「まず、年に一回しか和えねぇとかどんだけ遠距離恋愛ですか」
「銀さん、そこはツッコんじゃ駄目ですよ。あくまでもおとぎ話何ですから夢を
持ってですねぇ」
「俺ならアレだね、星とか作って勝手に渡っちゃうね!」
「どんなエスパーですか!!!」
こんな風に星を眺めるのは何時ぶりだろう。戦いの日々の中で見上げた空に星が
輝いていたのをかすかに覚えてはいるものの殺伐とし過ぎて美しいとは思えなか
った。
そしてふっとあの時同じ星を見上げた仲間たちはどうしているだろうかと、坂本
はきっとこの星に紛れて飛んでいる最中だろう。
ヅラと高杉はどうだろうか…
『私の願い事は…何時までもあなた達が幸せでありますようにと』
『じゃあ、僕たちが先生の幸せを願ってあげるよ!』
『フフフ、ありがとう』
互いの幸せを願い大きくはないがそれなりの竹に皆で短冊を吊した。それは毎年
の様に行われたのに結局あの人はこの世に別れを告げ仲間の殆ども戦の中で散っ
ていった。
幸せの価値観なんて人それぞれとは言えあの願いは殆ど叶えられなかったのだろ
う。
「今日くらいあの人たちものんびりできればイイですね」
「へっ?」
新八の指す相手が分からず首を傾げれば先にわかったのであろう神楽が眉を顰め
た。
「土方さん達ですよ。お昼に銀さんがいない時にいらして西瓜の差し入れしてい
ってくれたんです」
自分がギャンブルに行っている間に来た土方に目を見開きそれから苦笑した。あの
男は時々差し入れを持って万事屋を訪れる事がある。
別に恋仲と言うわけではないのだが飲み仲間と言う言い方が一番しっくりくるだ
ろう。
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