02/14の日記
23:34
スイートよりビター
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アホな旅日記をわざわざ読んでいただきましてありがとうございました。
お返事不要とお気遣いいただきましたのでこちらで。
未来吏部企画へのお言葉も本当に嬉しく思います!
ありがとうございました!
さてさて、今日はバレンタインってやつではないですか。
いつだって私は出たとこ勝負なので、お昼頃に妄想したヤツでも。
ちょっぴり大人向けです。
しかも、世間様の甘々とは程遠い暗い話です。
苦手な方はご注意ください。
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「君は優しいね」
言葉の意味ほど優しくない顔で楸瑛は笑った。
今は、あの時と同じ顔で絳攸を組み敷いている。
乱れた髪が、息が、この男が普段隠していたものを露わにしていた。
常春などと呼べない何か。
(知ってたけれど)
自分には見せない面なのだと、なぜ信じていたのだろう。
数刻に及ぶ擦過によって痺れた内を、まるで他人事のように絳攸は思った。
冷え切った室内で、白い息を吐いて、ただ無言でお互いの熱だけを貪る。
無理を強いた絳攸の体と寝台がキシキシと音を立てていた。
いつしか薄闇の満ちた部屋。
「……っ…ん……」
何度目かの果ての後に、降ってきた唇が、ただでさえ苦しい絳攸の呼吸を奪う。
逃げるように逸らした目に、ベッド脇に転がる場違いな色が映った。
「いつもお世話になってるお礼です」
そう言って差し出された包みは、作った本人らしく、ささやかでかわいらしかった。
「女性からだけでなく、日頃の感謝を伝える日ですよね」
職場の部下からの好意も無碍にするのも憚られた。
「君は優しいね」
そう言った楸瑛の腕には比べるのも馬鹿らしいほど、華美なラッピングの施された箱が抱えきれないほど溢れていたくせに。
笑って絳攸の腕を取った後、無言のままに連れ込まれた部屋で、楸瑛はその手の中のものを全て床にぶちまけた。
色の海の中に、重なった服。
押しつけられた熱と、射竦めるような闇色の目と。
骨が軋むほどに抱きしめられて、絳攸は初めてこの男が怖いと思った。
楸瑛の手に掛かれば、自分など容易くねじ伏せられる。
楸瑛が優しさで包んでいたそのタガを外したのを、あの時確かに感じた。
「……絳攸」
呼ばれた名。
ふと、絳攸は視線を目の前の男に向けた。
合わさる瞳の、底の底。
「絳攸……」
逸らされなかった瞳に沈んだ澱。
(馬鹿だな…)
強引に押し入った行為とは裏腹の、壊れものでも扱うかのような指先の動き。
絳攸は、頬を包んだ手に、己の手を重ねた。
「……お前は」
掠れてしまった喉から絞り出した声は低かった。
問うように揺れた瞳を見据えて、絳攸は続けた。
「俺がわざと受け取ったとは思わないのか…?」
訝しげに顰められた眉。
「……お前がこうなるとわかっていて」
否。
「お前がこうなって欲しいと期待して」
今度こそ見開かれた瞳は、それでもすぐに色を沈めて。
「……そう、信じられたなら」
「信じろ」
「そうだね。信じられるなら」
くしゃり、歪められたその顔を、絳攸はその手で引き寄せ、口づける。
しんじろと、口移しした音は、2人の狭間に消えた。
信じられるなら。
絳攸も、己の胸に返る言葉で胸を抉る。
冷たい床に広がる色たち。
世の中が己の想いを伝える日が来るたびに、自分たちはこうして不安定な想いを見せつけられる。
どうして、ずっと互いが互いの中で一番だと信じ続けられるだろう。
いくら試しても足りないくらいに。
「……好きなんだ」
薄っぺらな意志ではどうにもならないくらいに。
合わさった唇の味は、甘い菓子とは程遠い。
それでもそれがなにより、愛しかった。
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なんか必死な楸瑛が書きたくて。
楸瑛さん、鬼畜なら鬼畜でトキメクんですが、鬼畜になりきらない優しさと臆病さがずるいよずるいと脳内が勝手に妄想した結果です。
楸瑛は、きっと自分が貰ったお菓子やチョコは無碍にできても、絶対絳攸が貰ったものをどうこうしない人なんだろうな。
うう、そんな楸瑛が好き。
甘党な自覚はありますが、私はチョコレートならビターが一番好きです。
たまには、こんな双花もどうですかね?
ダメ?
なんて。
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