05/05の日記

23:13
菖蒲と月
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子どもの日と言ったら菖蒲湯ってことで、スーパーなんかでも5月になってから菖蒲が売っていてにへにへしちゃいます。
てことは、今日は双花サイトさんをまわると双花in菖蒲湯とか拝めてしまうわけですか!

そして、今日は同時に「スーパームーン」だとか。
必殺技っぽいなんて思いましてごめんなさい。
月が地球に接近しているのだとか。
詳しい距離の解説を見かけましたが、元々の単位が大きい為、あまり実感が沸かなかったので、ざっくりおぼえました。
つまり、月が大きくて、明るいって勝手に解釈しました。
で、思いついた双花の一瞬。
ちょっと事後描写。
でもエロではないかと。

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触れた後の熱の凝り。
ふわり、吹き込んだ風が溶かす。

「……寒い?」

開け放たれた窓から流れ出す紫煙を追わず、楸瑛はシーツに散った淡い髪を揺らしたのを見ていた。
その銀糸の狭間から覗いた光に、一つ、鼓動が跳ねる。

「いや、ちょうど良い」

白い白い背が闇の中で起き上がり、乱雑に脱ぎ捨てられていた衣服を適当に身につけるのを、見ていた。
やがて、楸瑛が凭れる窓枠の横、ラグの途切れたフローリングに直に腰を落とした絳攸は、そのひやりとした感触に目を細めた。
絳攸の熱を分けるのが、己ではなく、例えそれが無機物であったとしても嫉妬を覚えたことに楸瑛は苦笑を隠せない。

触れても触れても触れても。
一つにはなれない。

わかりきったその現実を何度も何度も。
時々、こうして酷く近付いた時ほどに。

「楸瑛」

窓のアルミに頬をつけて熱を冷ましていた絳攸が、高い位置の楸瑛を手招いた。
その、無邪気にも見える瞳。

「何…?」

請われるままに身をかがめた楸瑛の顔を、絳攸は強引に己と同じ角度にした。

「いたっ、ちょっと絳攸!?」

感傷にすら浸らせてくれないのかと情けなく抗議した楸瑛に、いいからあれ、と絳攸の白い指の指した先。
マンションのベランダの屋根ギリギリに見えた月。
薄雲など物ともせずに輝く、強い光。

「……怖いくらい、大きいね」

ポツリ、零れた楸瑛の言葉。

「ああ。でも、キレイだな」

楸瑛、と。
とても間近で、絳攸が笑んだ。

"月がきれい"などと。
そんな簡単に。
絳攸が。

月の満ちる夜。
先ほどまで感じていた空虚が満たされて行く心地。

「―――そうだね。とても、きれいだね」

返された音に、もう一度絳攸は目を細めた。

―――ああ、自分が絳攸を満たしている。

楸瑛はそっと、絳攸を背中から抱きしめた。

一つにならない距離ももどかしさも、こうして。
形なくとも。

ただ、同じ月を見る。
きっと、今この時にも、そこかしこに愛の言葉が満ちている。

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夏目漱石のI Love Youを「月が綺麗ですね」と訳したというアレです。
きっと今日はそんな言葉がそこら中に溢れていると思うと、それはそれで素敵だなと思ったのでした。

甘々?

そんな時もありますよね。

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