BL
□いつか笑顔、いつも笑顔
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『この世界が、ほんの少しだけ、ちょっとだけでいい。
あなたにとって、楽しくありますように。』
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それは、よく晴れて日差しも暖かく、『平和』を絵に描いたようにのどかなある日のこと。
長い黒髪を高く結いあげた青年―神田ユウは、貴重な休日に教団の森の中を歩いていた。
「…ったく、どこ行きやがった、あいつ…」
神田は小さく舌打ちして、足元の小枝を蹴った。
彼は先刻から、ある想い人を胸に、教団のあらゆる所を探しまわっていたのである。
お互いの自室、食堂、書室、指令室、化学班の部屋に大浴場まで、『彼』のいそうなところを片っ端から。
すれ違う人間にも問うてみたが、軒並み「そういえば見てないね」と返されるばかり。
――――となると、思い浮かぶのはもう朧気な一つの景色。
幼いころに二人で決めた、二人だけの、『ひみつのばしょ』。
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