ハートの海賊団
□報われる
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最近、シャチとろくに話をしておりません。
「私何かした?ねぇ、何で?」
「…。」
「黙ってないで答えてよ。」
「…。」
「オイ。」
「…あのな、そういうのは本人に聞け。」
分厚い本を頭目掛けて投げてきた船長に(もちろんよけたよ。ギリで)だってー!!と泣きわめくのはハートの海賊団、戦闘員のナナシだ。
「あの日からっ!シャ、シャチ逃げるんだもん!!露骨だよあれぇえええ!!」
一ヶ月前。長年片思いしていたシャチにとうとう告白したナナシ。…ところがシャチ本人が酔いつぶれてしまい、せっかくの告白を見事スカしてしまったのだった。
おかげで心が折れたよ。諦めた訳ではないんだけどね。だけどね!?
「あれからワケを聞こうにもいつもみたいに私の部屋に来てくんないし!!だからといって私からシャチに近づくとシャチ全力で逃げるし!!今じゃあおはようじゃあねすまねぇなの三言しか交わしてない!!」
雑談が駄目ならば伝言や指令(という名の口実)で話しかけてもあァーえェーと戸惑い気味に言って目線はいつも海か空。伝い終わればすまねェなとひきつった笑みをこぼして逃げるように去っていく…これで何をどうしろと?どこを直せばこの状況を脱出できるの!?
「船長、真面目に聞いてる?」
「聞いてる。」
じゃあ何故そんなに笑いを堪えているんだい?
「そんなお前に良い知らせがある。」
「え?なになに?」
前のめりに食いつく。そんな様子を見て船長は手に収まるサイズの布袋をナナシに手渡した。
「今日の昼頃、船は島につく。そしてこの金で新しい服でも化粧品だの何でもいいからシャチが寄ってきそうな物を買え。」
布袋の中には硬貨とお札がひぃ…ふう…みー…わぉ!!!!
「キャプテンありがとう大好きです!!!!」
もうハグしちゃうよ!!
バタタタタタタタタタ…!!
「あー………間の悪ィ奴。」
「ん?何か言った?」
「いや、別に。それからナナシ。」
「はい?」
「絶っっ対にシャチを捕まえろ。いいな?絶対だぞ?」
「アイアイ!!頑張るよ船長!!」
まさか船長がこんなに手助けをしてくれるなんて思ってもみなかった!!ありがとう船長、私負けない!!