ハートの海賊団


□リスタート
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カランカラン───…。


「いらっしゃい。お好きな席へどうぞ〜!!」


 明るい元気な声でいつも迎えられる、今日も繁盛している店内。そのお店はお食事処。看板にもお食事処と書いてある。(わかりやすいでしょ?)

 田舎以上大都市未満のこの島では人の出入りが多い。すなわち海へと続く大きな街道沿いの土地は儲けるにはもってこい。おかげでこの通り、繁盛しております。しかしそろそろこのお店も、残念な事に店じまいしなければならないのです…ルルー(←バックコーラスだよ)
 
 そんなわけで、一週間前から閉店告知をしたところ、いつも以上に客が入るようになりました!別に値下げも特別な料理も提供してないのにね。まぁ儲かっているから別に気にしないけど。それだけこの店が愛されてるって事じゃん?
 話は戻って賑やかな店内。今日閉店するというだけあって、店内はいつにもまして賑やかだ。


「おい姉ちゃん、この後空いてんだろ?」


 …ついでに、こんな奴等もいっぱいだ。


「だ、だからー。忙しいって言ってるじゃあないですかー。」
「終わった後は?どうせ閉店するんだったら最後にイイ思い出、つくっておいた方がいいんじゃねぇの?」
「閉店後の後始末があるんですってばー(こンのチャラ男ォ…!!いつまでも居座って尚且つしつこく話しかけやがってぇえええ!!)」


 笑顔(営業スマイル)がひきつってきたナナシ。
 普段ならこんなお客、裏へと連れだしその割れたアゴにローリングアッパーをぶちかますか周りの客が助けてくれるのだが本日はいつも以上に忙しいので抜け出す暇がない。二つ目の手段も周りがかなりの騒ぎなのと、いつもより客が酔っ払っててこの状況に気づいていない。よって無理。


「ちょっーと付き合ってもらうだけだから!!な?」
「む、無理ですっ…(ぬぁあにがちょっとだ!!下心見え見えだっつーの!!)」


 そう断った瞬間、腰に腕をまわされた。うげぁっ!!あああぁあぁぁぁあぁあああああああああヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。

 笑顔が崩れてきた。手が震えてきた。周りの音が聞こえなくなってきたよー。


「こ、この後にすぐやらないといけない用事があるんですぅー。」


 あ゙ー早く諦めて帰ってほしい。そろそろ我慢の限界。何でこんな時に限って周りが酔っぱらいばっかなんだ。役にたたない。


「用事とか嘘だろー?」
「本当…です!!」
「チッうだうだすんなよ…いいから行こうぜっ!!」
「っ!!」


 腕、掴まれた。もーキレた。限界点突破。大爆発。ナナシちゃんキレましたーもうどうなろうと知ったことか。全てコイツが悪い。コイツが悪いんだからこれから何をしよーと許される。うん。


「だから!!無理だって…!!」


 背中に隠すように握る拳。狙いをあの出っぱったアゴに向けて振り上げ…!



カランカラン…───



 突如、きれいな音が響いた。
 
 
 鳴ったのは相手にアッパーカットが決まった音ではなく、出入り口に取り付けていた小さな鈴の音。入ってきたのは若い、珍しい帽子を目深に被った男だった。

 その人物は店内に入るなり視線をナナシとチャラ男に向ける。(ナナシ的主観。だって目深に被ってるからよく見えないんだもん。私的にはそう思ったの。)


「あらー!?今日は早く会いにきてくれたのねっ?私嬉しい!!」


 そう言いながらナナシは満面の笑みで入ってきた男に抱きつく。そして耳元に口をもっていき言葉を呟き、腰に手を添えて振り向いた。方向は、一人ポカーンと立ち続けている、あのチャラ男。


「な、何だよソイツ…。」
「何って…見てわからない?」


 クスクス笑うナナシにチャラ男は何だよ彼氏持ちかよっ!と小さな声で悪態をつきながら出て行った。それを満足そうな顔で見送るとナナシはありがとうございましたー(もう二度と来んなボケカス)と一礼。


「さてとっ皆さぁん!!とてもとても名残惜しいのですがそろそろ本日の営業はこれまでです。お代はこちらへ、ツケは無しですよ。おじさん、そこのオニーサン。気をつけてお帰り下さいませ。

それでは、今までありがとうございました!!」


 そして店を閉めた。



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