ハートの海賊団


□good night
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 カチコチ。カチコチ。

 部屋に置かれた時計の音。

 ゴロゴロ。ゴロゴロ。

 ベッドの上で転がる私の音。


 あーダメだ。寝れない。全然眠れない。あれか。寝る前なのにコーヒーを飲んでしまったからか。それとも夕方までベポと一緒に寝ていたからか。


 ゴロゴロゴロゴロ。


 あーもう理由なんてどうでもいいや。夜中だというのに寝れないとか明日絶対隈出来てる。…船長とお揃い?嫌だなー…船長とお揃いだなんて。

 ベッドの上を、右にゴロン。左にゴロン…おっと。危うく行き過ぎて落ちるところだった。改めてゴロゴロ再開。右にゴロン。左にゴロン。


「あ。そうだ。」


 呟いた言葉と同時に起き上がる。お気に入りの枕を抱き抱えて、ナナシは真っ暗な廊下に出ていった。





*****


「ダイビング!!」
「Σうォあ!?なんだなんだ!?」


 ノック無しにナナシは室内へ入りそれと同時にベッドへと飛び込んだ。そのベッドにはもうすでに誰か居たらしく、驚き慌てて毛布の中でもがいている…(まるで毛布が生きているみたいだ!!実に面白い!)


「ってまたお前かナナシ!!」
「やぁ(^o^)/」
「やぁ(^o^)/…じゃねェよ!!お前なァ!!」
「しー。もう少し静かに言わないとお隣さんに聞こえちゃうぞ。」
「Σゔ…!!ナナシ…っ寝れないからっておれの部屋に来るのもう止めろって前にも言っただろ…!!(小声)」


 ようやく毛布から顔を出したのは至極お怒りな様子のシャチ。いつもの帽子とサングラスを装着していないので(寝るときもあの格好だったら笑える)パッと見別人のようだ。
 因みにシャチがなかなか毛布から脱出できなかった原因は、ナナシが馬乗りしていたからである。


「何で来ちゃダメなの?」
「な、何でって…おおお男の部屋に(しかも夜にだ!!)入るのは、その…色々とまずいだろ!?」
「えー?シャチに限ってそれはナイナイ(キッパリ)」
「…。」


 あれ。シャチが目頭おさえて涙堪えてる。


「(まぁいいや)ねぇシャチ。」
「(酷すぎる)…何だよ。」
「狭いからもうちょいよって。」
「Σコラ!!何勝手にベッドinしてんだ!!」


 しかしナナシはシャチの言葉を無視して毛布にモソモソと入っていった。

 コマンドは『ガンガンいこうぜ』


「わーっ!!わ゙ーっ!!」


 全身全霊で叫び阻止しようとする。でも表情はちょっと嬉しそうなシャチ。


「ちょ、耳元で叫ばないでよ耳痛い。」
「これが叫ばずにいられるかァああ!!!!」
「だーかーらー。そんな声あげたら皆の迷惑だって。」
「現在進行形でおれの睡眠を妨害している奴が言うセリフか!?」
「うん。」
「Σ言い切りやがった!!」
 
 
 ほどなくして、シャチの抵抗もむなしくナナシは完全にベッドの半分を陣取ってしまった。こうなっては例え槍が降ろうがバスターコールがかかろうがテコでもナナシは動かないことをシャチは学習していたので諦めることにした。

ナナシと口で勝負するにはそれこそ朝日を拝む覚悟をしないといけないのだ。


「ん〜これならよく眠れそう♪」
「…はァ。お前のベッドと何が違うんだ?」
「匂い、とか?」
「匂いィ?」


 最初にあった枕を右にずらし、ナナシは持ってきた枕を置いた。バフバフと馴染ませるように叩くナナシをシャチは呆れた目で見る。

 コイツは絶対おれのことを男として見ていないな、と痛感した。…また涙が出てきそうだ。


「お前さァ…。」
「んー?」
「もういい加減止めろ。」
「えー?なんで…。」
「なんで、じゃねェ。寝れないを理由で男の部屋に入って、もしもの事があったら…傷付くのはナナシなんだぞ?」
「…。」


 いつになく真剣に言うシャチに対し、ナナシは黙ったままゴロンと寝返りをうった。視線は、室内の壁からシャチへ。


「うん。わかってる。…でもね、シャチとだったらそうなってもいいっと思ってるんだよ?」

「そうか……………Σってえェ!?」

「シャチの傍にいると暖かいし、安心する。だから寝れるんだと思う。私、ちゃんとシャチを男として見てるんだけどなぁ。シャチはヘタレだけど…そんな風に心配してくれてるところとか、皆のためにガンバるところとか、ぜーんぶ好き。大好き。」
「…。」
「襲いたくなった?」
「…っ、んなわけあるかァ!!」


 一瞬、脳ミソが思考停止していたようだったがナナシの一言で正常に動き出したようだ。返事も否定的。

 ちぇっ残念。


「おれはもう寝る!!」
「えー?返事は?私に何か言うことがあるんじゃないの?」
「…っ!!」


 うわぁシャチったら耳まで真っ赤だ。


「言っておくけど、冗談なんかじゃないからね〜?」
「…それがわかっているから困っているんだよ。」
「あっはー☆」


 どうやら私の想い人は私のことをよくわかっているよおだ。うん。喜ばしいことである。


「返事はねぇ…明日でいいや。今日はもう眠い。」
「…え゙。」
「その代わりちゃんと返事してね。」
「…おゥ。」
「んじゃ、おやすみ〜。」
「…おやすみ。」


 そう言いながらも、シャチの内心は…。


(そんなこと暴露されたこの状況で寝れるはずがねェよ…!!)


だった。










(あ、ねーねー。今日は抱き合って寝てみない?)
(勘弁して下さい。)
(ちぇっケチ。)
(…。(理性もたねェんだよバカヤロウ…!!))


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