ハートの海賊団
□悪魔に春を
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皆様初めまして、ナナシです。私がハートの海賊団に正式に仲間入りしてから…だいぶ経ちました。
グランドラインの航海は前途多難で、様々な海賊の方々と幾度も戦闘をしてきましたが仲間を失う事無く順調に航路を進んでいます。
「ナナシ、そろそろキャプテンを起こす時間だよ。」
「はーい。」
そんな私のお仕事は、悪魔…げふんごふん。…じゃなくて。キャプテンを起こす事から始まります。
「キャプテン、おはよーございます。朝ですよー。」
ポフポフとお布団を叩く。
「…。」
「起ーきーてーくーだーさーいー。」
ユサユサ。今度は揺さぶる。
「………………おー。」
「おはよーございます、キャプテン。」
「ん…。」
ぐいっ!ボフンッ!
「Σぎゃあああ!キャプテン!?何するんですかぁああ!!」
「…ベポ、静かにしろ。」
「Σ寝惚けてやがる!!キャプテーン!!私ベポじゃないですー!ナナシですー!」
「……………………あ゙?」
ドカッ!
「…何勝手に人の布団に入ってやがる。」
「キャプテンがベポと勘違いして私を引っ張り込んだんじゃないですか!!突き落とすなんて酷い!!」
この悪魔!!
…とは口が裂けても言えない。
「もうすぐ朝ごはんもできますよ。準備終わったら食堂に来て下さいね。」
「おー…。」
キャプテンを起こし終わったら食堂でご飯を食べ、後片付けをし、その後は鍛練だったり。雑務だったり。色々お仕事をします。
まだ私は新米なので、専用のお仕事はなく基本は雑用ばっかです。
それだけだと申し訳なかったので最近はキャプテンを朝起こしにいく業務?をかってでたところ、皆にすっごく感謝されました。えっへん!
「ナナシー。倉庫の片付け手伝えー。」
「はーい!」
さて、今日も頑張りますか!
〜その日の夜〜
「島だ!!島が見えてきたぞォ!!」
船の上、見張り台から高らかに叫ぶクルー。
どれどれ…お、本当だ。夜なのにキラキラして綺麗な島だなー。島とはずいぶんご無沙汰だったから私もやったー!!とはしゃいでいたのだが…。
「行ってくるね。」
「船番は頼んだぞ。」
「じゃあなっ!」
何故私(しかも一人だけ)船番!?異議あり!!
「だってこの島『蝶の街』で有名だし。」
「なら私だって蝶々みたい!!」
「ナナシ…シャチが言っているのはその蝶じゃないぞ。」
なら何だって言うのだ!!
「ナナシ、おれ達これから酒を飲んだりご飯を食べたりしにいくんだよ。」
「ゔ…お酒飲むのか…。」
ナナシは酒に弱い。一口で倒れるという下戸なのだ。この返答に問題はそこじゃないんだが…とペンギンが呆れていた。
「そうだベポ!ベポはお酒飲まないじゃん!!」
せめてベポは残ってくれるよね!?
「ベポもこっち組だ。」
「何故!?」
「ベポがいると蝶も集まりやすいンだよ。」
なぬぅ〜!?さてはお前らベポのキュートさを利用して夜の蝶々をつるのか!!
「キ、キャプテン…は…。」
「…行くぞ。」
「アイアイ、キャプテン!」
「じゃあな〜ナナシ!」
「っ!チクショー!!裏切り者めェ!!二度と帰ってくるなァァァ!!」
〜二時間後〜
一人残されたナナシは自室で一人読書をしていた。
「夜の蝶…ってそういうことか。」
ようはお洒落で美人なお姉さん達が一緒にお酒を飲んでくれる店に入ってどんちゃん騒ぎをしているんだな。
しかも一件だけではあのクルーは止まらないだろうから帰りは遅いと見た。
「チクショー…。」
ひとりぼっちだコノヤロー。何で私だけ?あれか。私には魅力がないからか。しかし…今さら女らしくするのもなぁ。
絶対バカにされる。特にシャチ。アイツは絶対バカにするだろう…。船長もバカにするかなぁ?あ、しそう。鼻で笑って無言で去りそう。…船長のバカ。何も全員で行かなくてもいいじゃん!一人くらい私以外のクルー残せ!!
…。
…もう寝よ。
何か虚しくなったナナシは本を閉じていそいそと毛布を被った。