小説![](/img/emoji/4M.gif)
□〈 Kiss & Cry 〉
1ページ/1ページ
瞳に涙をたたえた彼女がそっと瞼をとじると、目尻にぷっくりと水滴がたまる。
僕は彼女の目元に微かに触れるだけのキスをおとす。そして自分の唇へその水滴をうつすと、舌でなめとった。
彼女が僕を見つめるたびに瞳が潤む。
重力に耐えきれずに頬にポロリと落ちた涙を、舌ですくい取ると、彼女はくすぐったそうに微笑んだ。
……キミは僕のものだ。
キミの全てを手に入れたい!
涙の一滴も余すことなく!!
彼女の涙がこぼれるたびに
瞼に
目尻に
頬に
何度も何度も唇をよせて、涙を吸い上げた。
口内で彼女の涙と自分の唾液が次々と混じり合う。
それがまるで化学反応をおこしたかのように、僕の頭や身体に熱をもたせていく。
高まる熱を解き放つように、抑えきれなくなった想いが溢れ出した。
彼女の両頬を手で包み込み、顔を上向かせる。
潤んだ瞳を見つめ返しながら、ゆっくりと顔を近付けてゆく。
だんだんと近づく温度。
混じり合う吐息。
お互いの唇が触れ合った瞬間……
想像以上のやわらかさと滑らかな感触に、全身が粟立つ。
幸福感と切なさが胸の奥へと突き刺さる。
やがて合わさった唇と唇の隙間から、涙がとろりと流し込まれた。
この涙は彼女のものか?
それとも僕の……?
初めてのキスは、甘苦しい胸の痛みと、少ししょっぱい涙の味と共に僕へと刻み込まれた―――
《2010年3月》
わざと名前を伏せて書いてますf(^^;
脳内で『八晴変換』して読んでくださいね!
,