小説
□〈 Melty Kiss 〉
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「やあ!」
プレハブの扉をあけると、いつものように読書にふける八雲がいる。
「冬季限定チョコ買ってきたよ!
一緒に食べよう」
そう声をかけたものの、真剣に本に向かう八雲はこちらを見もしない。
晴香は肩をすくめていつもの椅子に座ると、さっそくコンビニの袋から買ったばかりのチョコレートを取り出した。
四角い箱から個包装されているチョコを一つ取り出すと、包みをあけ口にほうりこむ。
ミルクチョコレートの甘さとなめらかな口どけが、なんとも言えない幸せな気持ちにしてくれる。
思わず「おいしい〜」と呟くと、八雲がチラリとこちらに視線を向けた。
そして手のひらを差し出してきて「チョコ」と一言で催促してくる。
もうっ!
自分勝手なんだから!
その態度に腹がたつものの、そこは惚れた弱味で、いそいそと包みをむくと、チョコレートを八雲の手のひらに乗せた。
八雲はそれを満足そうに味わうと、よほど美味しかったのか、すぐにまた手のひらを差し出してくる。
それを何回か繰り返すうちに、あっという間に箱はカラになった。
「八雲くん。
チョコもうないよ」
その言葉でようやく顔をこちらに向けた八雲は、眉間にシワを寄せて少し残念そうな表情をする。
せっかく八雲くんも気に入ってくれたみたいだし、2人でもう少し食べたい気もするな…
「このチョコレート美味しかったね!
私もなんだかまだ食べ足りないし、コンビニで買ってこようか?」
そうたずねると八雲は本をテーブルに置いて、おもむろに立ち上がった。
てっきりコンビニに出掛けるものかと思って私も立ち上がる。
すると少し身を屈めた八雲にそっと口付けられた。
八雲は、私の口内に入れた舌を優しく優しく這わせていく。
八雲の舌が上顎をなぞるたびに、身体の中心がしびれてピクッと反応してしまう。
私のその反応を楽しむかのように、上顎をつついたり柔らかになぞられているうちに、足の力が抜ける感覚が襲ってきて、思わず八雲の腕にしがみついた。
やがてそっと唇が離れる。
ぽっーとなりながら八雲を見つめていると、
「まだ足らない?」
と八雲に意地悪く微笑まれて、恥ずかしさにカッーと耳が熱くなってくる。
でもさっきのキスを、もう一度、味わいたくて…
「うん…もっと…」
ねだるようにささやくと、八雲がふっと表情を緩める。
そして、優しく細められた八雲の二色の瞳が近づいてきて、柔らかな黒髪が私の頬にそっと触れる。
そこでまぶたを閉じると、温かな感触に再び唇をふさがれた。
もっと…
もっと…
もっと…
あなたの甘くてとろけるキスをください――――
《2010年11月》へびいちご
悠李さん!
『サイト一周年&10万打』おめでとうございました☆
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