小説

□〈世界で一番熱い夏〉
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真夏にくる僕の誕生日。
何もいらないと言うのに、性懲りもなく今年も晴香からプレゼントが渡された。

「八雲くん、お誕生日おめでとう〜!今年はこれで夏を乗り越えてねっ!」

とひと抱えもある箱を渡される。
面倒に思いながらもしぶしぶ開けてみると、中身はかき氷機だった。

「こんな子ども騙し…」
「まあまあ、いいからやってみようよ」

晴香は持参した氷をさっそくセットするが、「あっ!お皿忘れたぁ〜」と頭を抱えた。

どうしよう…コンビニで買って来ようかな…と晴香が呟いている間にも、氷がぽたぽたと滴を垂らして溶け出している。

八雲は大きなため息を吐き出すと、仕方なく立ち上がり棚に置いてあるビーカーを差し出した。

晴香はありがとうと嬉しそうにビーカーを受け取ると、かき氷機の受け口に置く。
そして手動でハンドルを回し始めた。シャカシャカと涼し気な音と共にふわふわの氷が落ちてくる。

ビーカーが氷でいっぱいになると、イチゴシロップをかけてどうぞと僕の前に置いた。
スプーンを渡されて「食べてみて!」と期待に満ちた瞳で見つめられると、いらないとも言えず、とりあえず口に含んでみる。
冷たい氷が気持ちいい。
ついあっという間に食べ終えてしまった。

満面の笑みの晴香は「氷はまだまだあるから、たくさんたべてね」と再びビーカーにかき氷を作って僕の前に差し出すと、棚からもうひとつビーカーを取り出して、自分の分も作る。
真夏のプレハブ部屋で、かき氷をつつきながら二人で涼をとった。


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