†真紅の絆〜巡り逢う翼〜第2章†

□Crimson tea〜永久の愛〜
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「きゃ…龍咲先輩だ」

「貴女名字じゃ二人一緒の時だったら、どっちかわかんないじゃなーい」

「まぁまぁ、それに紅堂先輩も一緒よぉ」

廊下で様々な女子生徒がヒソヒソと話す。

彼女等はどれも頬を赤らめている。

「先輩方っ…!あの…お、おはようございます…!」

一人の少女が勇気を振り絞って挨拶をした。

「…あぁ」

「おはよぉ〜!」

すぐ後に出て来るのは黄色い声ばかり。

それぞれが注ぐ視線の先には、二人組の少年。

一人は短髪でサラサラな輝かしい金髪を持ち、綺麗な白い肌とくりっとした甘さを覗かせる蜂蜜色の瞳の少年。

身長は男子高校生平均よりやや小さめで、学ランの首部分は邪魔くさそうに開けている。


―紅堂 麗―



時折見せる無邪気な笑みは、非常に愛らしいと言われる。

まさに、年下好きには堪らない悩殺もの。

そして、もう一人は明るめな黒髪に濃い藍色の切れ長の瞳を持ち、無表情でクールな雰囲気を漂わせる少年。


―龍咲 祐俐―



麗より若干身長が小さく、日本人男子の中では小さい方に当たるかもしれない。

左耳には焦げ茶色の雫を模した形で、キラキラと揺れるピアス。

学ランは羽織っただけで前は閉めていない。

余裕を含ませたクールさが、中学生上がりの高一の女子には、大人っぽく見えるのだろう。

それぞれ整った顔立ちの二人は、あと二人も含めて高校では有名だ。

その有名さは他県の一部高校に知れる程。

中には彼等会いたさに男女問わず、受験した変わり者もいるとの事。

学力が見合い合格さえすれば通常受験と、何等変わらず入れるのだから文句の一つも言えない。

しかも、あとの二人合わせ四人は進学校なのに成績も秀でている。

容姿端麗で成績優秀、おまけに生徒教師関わらず性格も好評で、非の打ち所が無い程に完璧。

……ただ一人、祐俐を除いて。

人だかりがやっと減った頃、笑いを堪えながら、麗がからかう様に呟いた。

「ククッ…クスクス。オハヨー、悠里華ちゃん?」

ここで、今迄無言で歩いていた祐俐が足を止める。

「……麗、俺は祐俐だ」

わざとらしく間違った呼び名を口にする親友を、振り返り恨めしげに睨んだ。

しかし、毎度返ってくるのは罪深いまでの無邪気な笑み。

麗は純粋に悪戯を楽しんでいるだけ。

それが、こちら側のもっと吐き出したい文句に罪悪感を突き付け、吐き出せない辛さに苛ませる。

結局、これ以上文句は言えず、祐俐が"無垢な笑みも考え物だな"と思い終了となる。

女子高生の黄色い声や麗のからかいも、彼等の中では日常茶飯事。

教室で席に着いた頃HRのチャイム直前に、彼等の見馴れた少女が慌ただしく入って来る。

「おっ、噂をすれば。それに流石ぎりぎり常習犯だねっ」

麗が目線を向けると、彼女は肩を大きく揺らしていて相当急いでいたのが知れる。

すると、教室に入り席に着くのかと思いきや、祐俐と麗に少女は足早に近付く。

表情はどこか不満げにしていた。

そして、少年達が思った通り開口一番に少女は不満をぶちまける。

「祐俐朝起こしてくれって、言ったじゃんか!」

各自の会話でざわつく教室に、彼女の不満も混ざり合う。

一方、不満を当てられた祐俐は慣れた様に聞き流し、目の前の小説を読み続ける。

但し、ちゃんと内容は届いていた。

彼は話しを聞きながら本を読む時は、きまって右手で頬杖をついているのだ。

その右手で頬杖をついている様からして、相手が何を言ったのかは知っている。

反応を示さないだけ。

つまり、シカトしているのだった。
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