†真紅の絆〜巡り逢う翼〜第2章†
□Crimson tea〜永久の愛〜
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あれから四人はいつも通り、授業に出てくだらない話で花を咲かせた。
この四人はそれぞれの親が近所で同級生というのもあってか、幼い頃からいつも一緒だった。
合わせるでも真似るでもなく、自然と進学も皆同じになっていた。
ただ、この中で勉強が最も弱い悠里華だけは、残りの三人より多く受験勉強をした。
淋しがり屋でお転婆娘の悠里華。
黙っていればカッコイイ祐俐。
意外と秘密主義なくせに悪戯っ子な麗。
ムードメイカーだがこの中で一番食えないやつの暁。
ばらばらなくせに、纏まっている四人。
「なぁ、祐俐ー。お母さん急用で恢斗も帰り遅いから、外でご飯適当に済ませてだってぇ」
時は昼下がり放課後となり、悠里華と祐俐は並んで歩いていた。
悠里華の祐俐より遥かに深い漆黒の髪と、左耳に揺れる彼と色違いの藍色をしたピアスが、二人が双子であると周囲に知らせる。
「ふーん。悠里華、何食いたい?」
「ん〜、あたしはねぇ…」
悠里華はどうでもよさそうな反応で隠す、さりげなく気遣う優しさが片割れの良い所だと思っていた。
他にも色々知っている。
固定概念で大人っぽくてクールと言われるが、まだまだ子供で女の子を異性として見てない所。
そこは流石に悠里華も暁も麗も、健全な男子高校生なのかと不思議がる程。
慎重かと思えば大胆になる所。
口が恢斗程ではないが悪く怒りっぽいせいか、たまに年上に喧嘩を売られる所。
暁や麗等心を許した者には優しく、彼等を傷付ける者達には冷酷で容赦無い所。
秘密にしたいものは、いつもベッドの近くに隠すベターな所。
それ以外にもまだまだあるくらい。
「…決まんないんなら、俺が決めちまうぞ?」
「うわ出た!プチ俺様せっかち祐俐!」
「なんだそりゃ。俺はバケモンかよ、バカ悠里華」
何故なのだろうか。
晩御飯を決めるだけなのに何故か、罵り合いの火蓋が今、切って落とされようとしている。
「なっ!またそれで呼んだな、バカ祐俐!!」
「自分だって言ってんじゃん……しっ」
「え?ふひゃっ…」
結局自宅に向かって歩いていると、自宅目前で祐俐は不審な存在に気付く。
直ぐさま近くの曲がり角を曲がり、悠里華を引っ張り相手から死角になるよう立つ。
だが、存在に気付いていない悠里華は、頭の中がクエスチョンマークでいっぱいだった。
女性らしからぬマヌケな声を出さされ、悔しそうに頬ぷっくりと膨らます。
目の前には祐俐が立ち腰には彼の手が、背後に回され動けずにいた。
唯一の救いと言えば、角に隠れて直ぐ押さえられていた口が解放されている事。
ぴりぴりとした雰囲気が祐俐から伝わり、恐る恐るか細く問い掛けた。
「ど、どうしたの…?」
「しっ、黙ってろ……」
不審な存在の容姿は長身の男で、後ろ髪が風に従って靡く。
更に後ろ姿では男の年頃も分からない。
自然と下ろされたその金髪は、祐俐にはどうも麗にも似ている様に思わせる。
だが、身長とは別に麗と男が決定的に違う個所があった。
それは、耳だ。
人間とは明らかに違う尖った耳を男はしているのだ。
気配を押し殺す様に暫く監視を続ける。
…彼奴、人間じゃない…
まさか、"アノ時"みたいな奴…!?
もう暫く時が経った後男は待ちくたびれたのか、一つ溜息を吐き踵を返し歩き出す。
すると、男が踵を返したと同時に、祐俐は目を最大級に見開いた。
悠里華の腰に回す手も心なしか、微かに震えている。