†真紅の絆〜巡り逢う翼〜第2章†
□Crimson tea〜永久の愛〜
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「二人共、何してんのぉ〜?」
「っ!?」
「おわっ!びっくりしたぁ…」
自分達の後ろから突然声をかけられ、二人は同時に肩を大きくびくつかせる。
祐俐に至っては驚きに険しさを混ぜていた。
鋭い眼光に射抜かれた気分の相手は、両手を上げ眉尻を下げて苦笑いする。
「ちょっと、ちょっと…そんな怖い顔しなさんなって…」
「…何の用だよ、暁」
溜息を吐かれた暁は何事も無かったかの様に、悠里華の腰に手を回して背後から抱き着き、上目使いで祐俐を見詰める。
かわいらしいその様はまるで、暁と悠里華が仲良しの姉弟か、はたまたラブラブカップルに見えさせる。
だが、暁のこういった言動は昔からで、二人も気にせず話を続けていく。
「なんだ暁かぁ、いきなし声かけられたらびっくりするじゃん」
悠里華は腰に回された暁の腕に自分の手を乗せ、振り向いてから笑って咎める。
「えへへ、ごめーんね!ところで二人共、どうしたの?」
お家に入らないの?と、暁は悠里華の左肩に顎を乗せて祐俐に問う。
視線を逸らしたまま沈黙を続ける祐俐に代わり、悠里華が状況を説明した。
「なんか此奴がいきなし隠れだしたんだよ」
訳わかんない、とでも言いたげな悠里華の透明感ある高めの声。
口をへの字に曲がらせ、困った顔付きで片割れを見遣る。
暁と悠里華の不思議そうな視線を注がれるも、祐俐は平然とそれをスルーする。
先の驚きで無造作に落とされた鞄を再び持ち上げ、何も答える事無く歩き出そうとした。
しかし、予想外にもそれは祐俐の腕を掴んだ暁によって、阻まれてしまう。
つい誰もが忘れがちになるが、ベビーフェイスの暁も、れっきとした男なのだ。
同性の祐俐がその気にならない限り、腕を解く事は容易には敵わない。
更に今迄の純真無垢な瞳は消え去り、全てを見透かす様な鋭い瞳を向ける。
「黙って逃げるのは、ちょっと卑怯なんじゃない?」
口許は笑っているがどう見ても目は笑っていなかった。
一度こうなってしまうと、今の暁を止められる者は存在しない。
ただただ、無事に済むよう事の成り行きを、静かに見守るしか他に術は無い。
「ぅ…ゎぁ。黒暁、降臨寸前だよ……」
普段朗らかな暁が実の所、四人の中で一番キレると質の悪い人物だった。
悠里華は思わず顔を引き攣らせる。
一方未だに腕を離してもらえてない祐俐は、くだらなさそうに自分を掴んでいる腕を見詰める。
表情一つ変える事無く無言の時が流れた。
「ちゃんと、説明責任は果たそうねぇ?じゃなきゃ、僕…怒っちゃうぞ」
「……」
「……あーそー、だんまりかいな。いつから祐俐君は、そんなへなちょこになったんかなぁ〜?」
当人は知ってか知らずか、所々暁の口調が関西風に訛っている。
関西出身の父親のが移ったのか、何故か暁はキレると突然喋り方が豹変しだす。
つまり、口調が変わりだしたら、頭に血が上っている合図だ。
それを確認した悠里華は米粒程の可能性を信じて、祐俐の説得を試みる。
「おい、祐俐…いい加減にしないと、あたしにも暁は手に負えないんだぞ?」
「……はぁ、めんどくさ」
この状況での片割れの爆弾発言に、悠里華は顔面蒼白となる。