☆巡り逢う翼第1章☆

□第20話 白き悪魔
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レイスの予感が恐ろしく的中してしまったのは、これより凡そ1週間後の事だった。

徐々に近付く文化祭と平行して、少々早めの中間テストに備える頃合いとなった時に事件は起こる。

ある日の夜も更けた頃――。

「っ……くっ……」

冴は度々ひっそり、こつこつと魔力錬成の練習を続けていた。

だが、魔界にいた時より上手く出来ない事に加え、大概暫くすると邪魔が入る。

「冴ー?」

「きゃ…!?」

当然ながら魔力に精通したラークであった。

驚きに肩をびくつかせた彼女を、拗ねた口調で不満そうに見下ろす。

腕を交差させて眉をしかめるのは彼のよくある癖だ。

「お前は人間だ。魔力を使えば身体にどんだけの負荷が掛かるか…わかんねぇんだぞ?」

やや冷めた瞳で窘める視線の先には、不安定な回転を繰り返す半透明の球体。

金色の色合いはどことなく、神々しさと不気味さが入り混じっている。

シエルが体現せし色調を忌々しげに睨む。

「ラーク…?」

冴が不安そうに呼ぶが返事はない。

彼がゆっくりと近付いてそっと指に触れる。

すると、僅かに硝子が砕け散る様な音を立てて消えた。

「こんだけ脆い出来で苦戦してん様なら、やっぱ人間が関わるべきじゃねぇ行いだ」

少し呆れた物言いは、冴にはどことなく安堵している様にも聞こえた。

だが付け加えた言葉は冷たい。

「それに…この色なら、尚更滅多矢鱈に使うもんじゃねぇ」

いつになく厳しい表情は自然と冴に疑問を抱かせる。

「なんで……?」

そう間を置かずして不意に問われた為に、ラークの顔付きは感情そのままに表される。

自身の掌を汚らわしげに見詰めて返した。

「その黄金色は……シエルと同じだ」

"鬼天の瞳の色と並ぶ程珍しいその色は、15年経つ今も未だに有名な話だ"と、補足する。

デーモンの二つ名が出てきて冴の脳裏に過るのは、あの特徴的な紅瞳とーー……。

……ーー先日の意味深長な夢。

「あ、あのね……」

冴が意を決して明かそうとした時だった。

外の遠方より大きな爆発音がしたのは……。

「きゃぁっ…!?」

「なんだっ!?」

悍ましい重低音が地響きとなって、かたかたと家具を揺らす。

冴は驚きで頭を両手で抱えその場にしゃがみ込む。

ラークに至っては彼女より優れた聴力らしく、耳鳴りに襲われ苛立たしげに手で耳を押さえていた。

「くそっ…!思った以上に早く動き出しやがったな……」

苦虫を噛み潰した表情で急いで、冴の腕を掴み連れ出そうとする。

しかし外には既に新たな敵が仕向けられていた。


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