☆巡り逢う翼第1章☆
□第4話 血と継承
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魔界各国に点在する王族。
謀反等で奪った王座に君臨する者もいたが、この世界には先祖代々王者になる一族が存在する。
古書では彼等は元々一つの民族でBLOODLESSに至っては日本人が悪魔の神と契約したとあるが、今となってはどの国屈指の賢者も実際の所誰も知らない。
そして、魔界では彼等を共通してこう称する。
"正統なる王族"と…。
――PHASE4 血と継承――
6月半ばに入り日本の季節は梅雨へと移り変わる。
日本程の梅雨時を経験した事の無いラークは、あまりのじめじめとした湿気にげんなりしてしまう。
「くそっ…なんなんだ、この連日の異常な湿気は」
同居人の頬杖をついて悪態づく姿を見て、冴は苦笑して洗濯物を畳みながら話す。
休日のこんな何気ない会話が、彼女にはとても幸せに感じていた。
「この時期は仕方ないのよ。魔界って所は無いの?」
「一口に魔界って言ってもスゲー広いんだぜ?」
ラークは最近見付けたお気に入りの味のアイスコーヒーを飲みながら、無邪気な笑顔で話を続ける。
「俺が生まれたFLAMEっていう国は、最西端で日本と似たような気候だが、隣のBLOODLESSはFLAMEよりは一定して温暖だしな」
魔界という未知の世界に、冴は興味津々にラークを見詰める。
だが何より、ここ最近で彼が素直な笑顔を見せる事が増え、人間界への興味も含め自身の国について話してくれる事が、冴は最も嬉しかった。
「遠い北国じゃ一年中真冬の所とか、日が沈まない時がある所とかあんだとよ」
俺は行った事無いから実際わかんねーけどな、と補足した後ラークは再びアイスコーヒーを口に入れる。
冴は洗濯物を片し終えるとキッチンの、椅子に座っていたラークの向かい側に座った。
彼女が座ると次はラークが立ち上がり、彼女の好きなアイスストロベリーティーを淹れて差し出した。
「ほらよ」
ぶっきらぼうな言い草だが、紅茶の方は調度良い濃さの色合いを出していた。
家事の労を労う様に好物を出されて彼女は優しく微笑む。
「ありがとう、ラーク。優しいのね?」
「バッ…そんなんじゃねーよ」
照れ臭くなったのか彼は座って、そっぽを向いて頬杖をつく。
始めこそ分からなかったが共に過ごすにつれて、冴はラークの性格を理解していった。
彼に出会った頃抱いた恐怖心等もすっかり消え、今では彼が心を開いてくれている事を嬉しぶ。
彼女は顔を綻ばせて、冷たい紅茶を口に運んだ。
「ラークって始めはクールっていうか、あんまり感情を表に出さないタイプかと思ってた」
突拍子もない事を言われた上過去の言葉を思い出して、ラークはキョトンとした後暫くして失笑してしまう。
一方笑われる覚えが無い冴は頬を膨らませて抗議した。
「笑われる様な事言った覚えないんですけどー?」
溜息を吐くと拗ねる様に紅茶を飲む。
やっと失笑を終えたラークは彼女に平謝りしながら、アイスコーヒーを飲んで自身を落ち着かせた。
「悪ぃ悪ぃ、レイスも昔似たよーな事言ってたんだよ」
「あの…レイス、が……?」
狂気の笑みを見せたレイスからは想像がつかない彼女は、微かな疑いと興味を混ぜた表情をする。
ラークはけして明るくない過去に想いを馳せ、懐かしみに浸りながら言葉を紡いだ。
「彼奴…あれでも昔は病弱でよ…俺と違って軍人なんて柄じゃなかった」
冴は内心優しく微笑んで話すラークに一瞬驚くが、先の戦闘時の会話を思い出し仲の良さが窺えた。