★第壱章 番外編&短編集★

□運命〜Intertwine feeling〜最終話
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夢を見た

真っ白な世界

それなのに手を延ばしても、誰も…何も、差し延べてくれるものはない空虚感

俺は"そこ"に立っていた

ただ、そこに立ち尽くしていた

体は動く

意識もはっきりしてる

でもどこを見回しても

どっちが前でどっちが後ろか…ちっとも分からない

とりあえず視線を前と思しき方へ向けると…

少し先には二十歳前くらいで黒髪の男と

男より少し若くて腰の手前辺りまで栗色の長い髪を

さらりと優しく靡かせる綺麗な女がいた

互いに微笑んでいるどちらも、姿形や気配は人間…

ただ

男の右耳には俺と同じピアスがあって

横顔だがどこかあの顔付きと

髪型や雰囲気は…

俺に似ていた

女の方は不思議な話、一瞬シエルと見間違えそうになった…

だって、雰囲気とか姿形が何故か…シエルにしか思えなくて…

なんでそんな奴らがこんな所にいるんだ?

彼奴らは何者なんだ?

話し掛けてみようと口を開いても

何故か肝心の声が出てくれない

声がダメなら近付こうと走っても

ちっとも距離が縮まらない

それどころか、息が上がるくらい

俺がこんなに動いても

向こうは全く気付かない

そもそも、気付く気付かない云々の前に、その前に気配そのものが

……っていうか、奴らは始めから動いてなかったんだ…

髪や服が靡くだけで…

二人共動いてなかった……

何が起きているのかさっぱり分からない

次の瞬間、今度は俺の背後から誰かの気配がした

逃がすまいと俺は勢いよく振り返った

…するとそこには

さっきの黒髪の男と同じ髪型の

二十代後半辺りの悪魔の男と…

明らかに染めたであろうの色合いで

さっきの栗色の奴と同じ長さで金髪の

男に比べ幼さがある人間の女がいて…

……何故だろう…

俺は…知っている

この悪魔と人間の二人を

俺はよく知っている気がする

魔界じゃ、卑しくて愚かな下等生物に値する

それが魔界の常識

そう言われている様な人間を

人間界に降りた事の無い俺が

知ってるはずがねぇのに…

そもそも、悪魔が人間と結ばれるなんて

そんなバカバカしい話、聞いた事がない

……違う

そんなんじゃねぇ

問題はそこじゃない…

あの二人が…俺には懐かしくて仕方ないんだ……

それこそが、問題なんだよ

抱き着いてしまいたい

大声で泣いてしまいたい

だけれども絶対叶わないと解ってる……

彼等が二度と俺を見てくれる事が

一生有り得ない事も……

知っている

…この焦がれる様な衝動はなんだよ…?

苦しくて悲しくて…

やるせなさが心の奥から酷く強く突き上げる

あまりにも残酷過ぎると

思わずにはいられなかった……

涙が出そうになった気がしたけど

なんか悔しいから堪える様にして

突然大声を上げてやろうとした

そしたら、そこで景色が変わっていた

俺の瞳―め―に映るのは

見慣れた自分の寝室の天井だった

俺はいつの間にか握り締めていたシーツに嫌な汗を少し滲ませ

頬には覚えの無い涙の跡が

うっすら残っている

「…ゆ……め…?」

理由は漠然としているが

嫌なくらい俺には悪夢としか思えない

夢と分かって何故かホッとしたけど…

それでも…

心には不快なしこりが、はっきりと残ったまま…

朝日と小鳥の囀りが余計

俺の心には無情に感じた





―FINAL PHASE Extermination―







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