☆巡り逢う翼第1章☆

□第20話 白き悪魔
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レイスが手を貸しながら二人で立ち上がれば遠くで地面が崩れ落ち闇が広がる光景が映される。

「ここも時期に終わりか…天宮、しっかり僕に掴まっていてよ?」

緊迫感に包まれた声の彼にエリは不安気にしがみつく。

何が何やら全く思考が追い付いていけない。

到頭足元の寸前に迄迫る所でレイスが彼女の腰に手を回して強く抱き寄せた。

驚きと恥ずかしさに言葉も出せない。

下心がない所為かそんなエリに構わずに空いた手を天高く翳す。

「アクア・ベール!ミスリル……シールド!」

張り上げて唱えると先ずは薄碧な半透明の壁が二人を囲い、その外側を幾重も水の膜が覆った。

彼は苦悶に満ちた顔で僅かに汗を滲ませる。

レイスの呼吸を詰まらせた声は当然ながら彼女の不安を煽る。

 ――私を見捨てて

「っ……」

足手纏いなのだと分かっていながら、エリは言葉を音に出す事が出来ない。

背中に回していた手に力を込めてしがみつく。

「大丈、夫っ……僕が、守るから……」

レイスは額から汗を垂らしたまま強がる笑みを湛える。

頼りなくも縋りたくなるそれは彼女の胸を締め付けた。




















――PHASE20 白き悪魔――
















辺り一帯の空間はすっかり崩れ去り、足元さえ漆黒の暗闇に包み込まれる。

激しい崩壊の音だけではエリの不安を増幅させるだけでしかない。

時が経つにつれ彼の顔色は悪くなり白くなっていく。

血の気が失せていき更には指先から血流が滞り始める。

「レイスっ…?貴方、冷たいっ…!?」

「大丈夫。君は……"君だけ"は、絶対帰すんだっ…!」

実の所レイスは魔力の激しい消費により異常を来していた。

悪寒を伴い息苦しさが生命の危機を訴える。

だがそれでも、彼女を無事に帰そうという精神力でなんとか踏みとどまっていた。

次の瞬間今度は眩し過ぎる光が溢れ出す。

暗闇からの変化に目は追い付けず二人は目を瞑る。

それからまもなくして意識を失った。

「っ…!エリっ!!」

エリが目を覚ました時には先程の光景はなく、見覚えのある城内の廊下だった。

軽い倦怠感と頭痛を覚えるもこれといった負傷は見当たらない。

「こっ……こは…?」

冴の助けを借りて曖昧な意識のまま半身を起こす。

一方漸く再会を果たせた事に喜びの余り冴は抱き付いた。

「良かった…!!無事でホントに良かった!!」

「冴…ごめんね。心配掛けたわね……」

「ホントだよっ…!!このツケは、大きいんだからねっ…!?」

泣きじゃくりながら抱き締める力を強めてひたすら喜ぶ。

そんな親友の反応が嬉しくてエリは掠れ声で口元を綻ばす。

「クスッ…そうね。ちゃんと払うわよ…」

まるで双子の姉妹の如く仲の良い二人を見てラークも安堵感に包まれる。

一段落した事でこちらも友を起こそうと揺さぶる。

「おいっ、いつまでも寝てんじゃねぇーよ」

和やかな雰囲気はラークの緊迫した声で現実に引き戻した。

「レイス…?おいっ、レイス目を覚ませ!!」

ふと触れた指先の尋常でない冷たさに愕然と立ち尽くす。

原因を探る思考回路に真っ先に思い付いたのは――。

「冴。天宮と部屋に戻れるよな?」

「え?う、うん…でも、人間のあたし達だけじゃ……」
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