☆巡り逢う翼第1章☆

□第4話 血と継承
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「レイスは初めて出来た…最初で最後の親友だからな…」

「なら、つらいでしょ?魔界に戻れば―……」

帰国する様に促そうとする冴に対して、ラークは彼女の両頬に手を当て言葉を遮った。

頬から伝わる彼の温もりに彼女の、小さな心臓は僅かに鼓動を速める。

彼女は顔を赤らめないよう必死に努めた。

ラークは整った顔立ちで、彼女にだけの微笑みを見せる。

「つらいけど、瀧本の傍を離れる方が……俺はもっとつらい。だからそんな事、言うなよ…?」

「うん…」

冴が俯き加減で黙っていると、突如ラークの腹の虫が鳴る。

二人がキョトンと目を合わせて時計を見詰めれば、時刻は18時を指していた。

調度夕食時を知らせる様に鳴ったため、冴は思わず吹き出して笑ってしまった。

「ぷっ…あはは!ラークのお腹ってば正直ー」

笑われた事にラークは顔を赤らめる。

「るっせーな、腹が減ったもんは減ったんだよ!」

「はいはい、そろそろ晩御飯にしよっか。ラークは何がいい?」

彼女に"何がいい?"と聞かれ、ラークは天井を見上げて考える。

その間に冴はエプロンをかけていく。

「うーん…じゃ、日本食がいい」

幅広い返答に冴は苦笑するも、冷蔵庫の中身を見て考える。

考えながら彼女はラークに嫌いな食べ物を聞いた。

「そういえばラークって、嫌いな食べ物無いの?」

問い掛けられたラークはテレビに気をとられつつも彼女に答えた。

「ん?あれ」

彼の"あれ"というなんとも抽象的な表現に、冴は振り向き彼の指差すテレビを見る。

テレビ画面には、青魚の寿司と漬物を紹介する番組が流れていた。

彼女は魔界にも寿司があるのかと驚く一方、もしかしたら食わず嫌いなのではと疑問を抱く。

そして、思い切って本人に問い掛けてみる事にした。

「ラークってもしかして…食わず嫌い?」

冴の質問は的中したらしく、ラークはゆっくりバツが悪そうな顔で見上げた。

「……悪ぃーか」

「別に悪かないけど…へぇー、ラークってああいうのダメなんだ〜」

言い終えるとラークの頭を数回軽く叩き、キッチンへ戻っていった。

イマイチ子供扱いされた気分になり、あぐらをかいていたラークは渋々再びテレビに視線を向ける。

そこで彼はふとある事を思い出す。

「瀧本」

「なぁーに?」

冴は冷蔵庫にあった野菜の下ごしらえをしながら、やや大きめの声で返した。

自身に返されたソプラノの声に、心地良さから胸が静かにときめく。

高鳴りを隠そうとラークは平然を装って話を続けた。

「明日、お前学校だっけ?」

ラークはカレンダーに視点を移して、翌日は月曜だという事を確認する。

冴も頭の中で翌日の曜日を確認していった。

「うん、そうだけど…それがどうかした?」

ラークが何故自分に気にかけるのか分からず、一旦手を止め首を傾げて振り返る。

「いや…ここんとこ音沙汰ねーから、もしかしたらそっちに"彼奴ら"来るかもな。だから、気をつけろ…?」

すぐにレイスの話だと気付くも、妙に神妙な面持ちのラークに冴は"彼奴ら"という表現に、引っ掛かりつつ眉を下げて笑った。

だが、その彼女の反応がラークにはかえって胸騒ぎを増幅させてしまう。

「やーねー。学校なんかで騒いだら向こうも大変でしょ?」

確かに彼女の言う通り、あまり公で人間に悪魔の存在を認知されるのは色々な意味で困る。

しかし、もしラークがレイスやカレンの立場ならば、最も相手油断している可能性が高い学校を選ぶのも事実。
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