☆巡り逢う翼第1章☆

□第2話 裏切り者
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「瀧本…?」

「ラーク…あたしが、判るの…?」

久方振りに名を呼ばれて冴の心に温かい想いが滲む。

嬉しさのあまり、冴は飛んでいるラークの真下へ駆け寄ろうとする。

掌をいっぱいに広げて空へ、腕を伸ばしたまさにその時――。

ある人物の動きに気付いたラークが激しく大声を張り上げた。

「バッ…来るな!!」

「!?」

焦りを剥き出しにした大声から、反射的に冴がびくりと動きを止めた。

瞬間一筋の光線がラークの左腕を掠める。

その隙にエリが冴の腕を、咄嗟に引っ張りラーク達から遠ざけた。

差し延べた手は虚しく空を掴む。

冴は息を詰まらせた様に表情を歪める。

「ちぃっ…!レイス…!!」

軽く火傷した左腕を右手で抑え、ラークは光線を放った人物を警戒と痛みで睨む。

振り返り様に映った友の顔は、俯いていて窺い知る事は出来ない。

只、やり場のない怒りからわなわなとさせていたのは、否が応でも十二分に伝わっていた。

「ねぇ、ダーク…なんでかな?なんで…僕達を裏切った!!」

「俺は裏切った覚えはねぇーよ!!ただ殺さなかっただけだ!!」

「それを裏切りって言うんだよっ!!軍トップの君なら分かるだろう!?」

間髪入れずに張り裂けんばかりに荒げたレイスの声。

吐き捨てる様に言い終えるとラークへの攻撃を再開させた。

刃と刃が交わされる金属音が激しく辺りに響く。

「僕や姉さんを裏切って…魔王様まで裏切って…なんで僕が選ばれたか、分かる!?」

苦しそうにも荒く言葉を紡ぐが、攻撃の手は止まず寧ろ激しさを増す一方。

自ら一切攻めようとはせず、ラークはただただレイスの攻撃を躱し、相殺させるだけ。

だが戦闘の意志を見せないラークの行為が、余計レイスに悔しさを与え苛立たせる。

「くっ…!!レイス!止め――…」

「君は僕の親友だからさっ!!」

「ゔっ……!」

避けるばかりのラークの隙を突き、レイスはラークを勢いよく突き飛ばした。

空を真横にラークが吹き飛ばされる。

少女二人は非現実的な状況に、ただ困惑した様子で事を見守るしかない。

「くそぉっ…!!」

防戦だったラークは素早く受け身をとり、意を決して反撃に出る。

しかし、その時レイスの標的は既に、別の人物に向けられていた。

というより、標的を変える時間稼ぎの為にラークを突き飛ばしたと言っても良い。

予測される今後に悍ましさから背筋が凍り付き、思わずラークの背中を冷たい汗が伝う。
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