うたかたの幸いをこの手に

□双子と服とテスト事情
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ぽてっ。


急に昌の体がベッドにすいこまれ、
規則正しい寝息が聞こえてきた。
ご丁寧に物の怪まで抱いてくるんと背中をまるめている。
大事なものを抱えるようにギュッと。

一方、物の怪は首が絞まってちょっと苦しそうだ。
普段やられっぱなしだったのでいい気味。

こうやって改めて昌を見ていると同じ顔のはずなのにどこか違った印象を受けた。
うまく言葉にできないけれど、繊細な感じがする。


長い睫毛の落とした影が息に合わせて微かに揺れた。
短パンからにょっきりでたしなやかな白い足は俺のとまるで違う。


というか、なんで短パンなんだ。

俺ん家では何故か着物で過ごす決まり(じい様の趣味)があるのに。

その中でも、昌はかなりの和服派。

なんでも、洋服の組み合わせ方や、カッコイイ着崩し方を考えるのよりはいいとのこと。

確かにファッション雑誌にはいろいろ書いてあって着こなすのは骨が折れる。
なんでもアリなように見えてややこしいんだ。

きっちりとした決まり事さえ守れば変にならない和服の方が昌の性に合っているのかもしれない。

珍しい洋服姿をまじまじと見つめながら考えた。
もしかしたらこの後、出かけるつもりだったのかもしれない。
愚痴に付き合わせて悪かったな、と心の中で謝った。

しかも、寝ちゃったし……。



昌は洋服には頓着しない。
その証拠にこの短パンは小学生の頃のだし、Tシャツは昌親兄のお下がり、さらに華奢な体には不似合いなだぶだぶのカーディガンを羽織っていた。


でも、何故か可愛いと思ってしまうのは俺だけじゃないと思う。
たぶん。
こんなことを言ったら、また紅蓮に「このブラコンめっ」とか言われそうだ。

邪魔にならないように後ろで結った長い髪……。
うっとうしい前髪を無造作に留めたであろう黒いヘアピン……。


ほんと……、なんで昌は女の子に生まれてこなかったんだろう。
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