うたかたの幸いをこの手に
□双子と服とテスト事情
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図書館で教科書を広げ、
二人で小声で話をする。
「なんだか懐かしいわね。
昔もこんなふうに
昌にいろいろ教えてもらったわ」
彰奈はページをめくりながら
嬉しそうに言う。
「今は俺が教えてもらう番だけどね」
何と言っても彼女は学年の上位の成績を納めている。すごくいい先生だ。
「ふふ、そんなこと言って……。私、いつも2番なの。
昌はこの意味がわかるでしょう?」
彰奈は眉をひそめてそう言った。
なんでも悔しくて先生に問いただしたらしい。
頑張って勉強している彼女のことだ。
追い越したい相手の名前ぐらい知りたかったのだろう。
でも、聞かれておいそれと教えてしまう先生は問題じゃないのか?
ほんと、個人情報もなにもありはしない……。
「まぁね……。
勉強は昌親兄にいろいろと教えてもらったんだ。
それに俺はよく学校休んでたしね。
体調の良いときにできるだけやっておこうと思って。
時間の大切さは、人より長く記憶がある分、身に染みてるよ」
ごまかしても意味がないことぐらい分かっていたから素直に答えた。
「そういうわけだから、休憩終わりっ」
彼女はちょっとため息をついた。
「そうね……時間は大切にしなきゃね。
残りをやっちゃいましょうか」
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「ん……。
終わったー!
最後まで付き合ってくれてありがとう」
勉強道具を片付けながら、時計を見た。
思ったよりも時間がたっていた。
「いえいえ。
私こそ、ためになったわ。
ありがとう。」
「もう暗くなっちゃったね……。
家まで送るよ」
俺はそう言って彼女の手を引いた。
彼女の顔がほんのり赤い。
「……っあ、ごめん。
つい……。」
今度は俺が赤くなる番だった。
パッと手を離す。
「い、いいの。
さっきのままでいて」
頬を染めながらも、
彼女の手はしっかりと俺の手を掴んだ。