うたかたの幸いをこの手に

□祭に響く歎きの声〜中〜
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ーーざわっーー

「!?」

背中になにか冷たいものが走ったような気がして、辺りを見回す。




文化祭の準備物が置かれた一角に違和感を感じた。
それらは統一性がなかったけど、どこか異様な空気を放って、いわくつき……という感じがした。


学校中から集めてきたのだろうか。

違う……。
そういえばこの学校の近くに旧校舎があったのを思い出す。
お決まりの音楽家の肖像画に、古びた小さなロッカー、
壊れた扉、時を刻まなくなった時計……。

どうやらお化け屋敷の雰囲気を盛り上げるために運んできたらしい。

顔をしかめて近づいた。


しかし、いくらなんでもこれは酷すぎる。
浩人はいったい何をやっていたのだろう。





ーー寂しさをーー



「あ……れ?」

体の内側からなにかがせりあがってくるような不快感に思わず口元を押さえた。

ひときわ禍々しいものを纏った机……。
気持ち悪い……。



ーー知っているのでしょう?ーー

あの声がする……。
他の音は聞こえない。
昼休みの喧騒も遠くにいってしまったように……。

心がざわつく。
知らないっ、そんなものは知らない。



ーー嘘……ね。ーー

その言葉が突き刺さる。
平静が保てなくなって、はやる鼓動がうるさく響いた。


ーー偽りの心……、私とおんなじーー


このままでは飲み込まれてしまう。
分かっていた。

遠くなる景色は失せ、目には机しか映らない。


勝手に手が引き寄せられた……。


ーーだから……ーー

机に触れる右手……。


ーーこっちにいらっしゃいーー
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