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□西風とありのままの俺たち
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 出発時刻にはまだ時間があったので葉柱はおもむろに携帯を取り出しゲームを始めた。それを蛭魔がヒョイと画面を覗き込み眉を寄せる。

「……将棋?」
「そ、俺指せるんだよ」
「将棋盤、お前の家にあったか?」
「爺ちゃんちにある。教えてくれたの爺ちゃんだしよ」
「糞爬虫類の割に脳みそは働いてんだな」
「だから俺は人間だって!」

 相変わらず上からものを言う蛭魔に葉柱は苦笑いしつつも、ふとコイツにもってこいの表現があったのを思い出す。

「将棋の戦法でな、お前みたいな奴を指す言葉があるんだ」
「ほう?」



「高飛車」



 そう言うと、一瞬何の事か分からない表情をしたが、流石蛭魔は直ぐに理解して、今度は納得したかのようにニヤリと笑う。

「ケッ、上等だ」

 力強い碧い瞳が俺を魅了し、有無を言わせない態度が俺を縛り付ける。葉柱が、そんな高飛車だが愛してやまない蛭魔を成田から見送ったのは、もう1ヶ月も前の事だ。






西風と
ありのままの俺たち

 
 
 


 既に葉柱は限界だった。待つとゆう行為に。蛭魔からの何の連絡も無いままとうとう1ヶ月が経ってしまったから。
 以前に高校時代、蛭魔がアメリカで合宿をした時は約40日。けれどあの時は単なるアメフト繋がりの元ご主人様と元奴隷の関係。解放されて一切連絡が無くなり幸せな気分になったものだったが、今では経緯はこの際すっ飛ばして肉体関係を持つ恋人同士。一週間も逢わずにいたらお互いの体を貪るように愛し合う仲なのだ。

「蛭魔……何故連絡してこねぇ?お前…今何処に居るんだよ…」
 
 
 
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