頂き物
□いつもいつまでも
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[いつもいつまでも(類蛭)]
傍にいるのが当たり前で、器もデカい。何だって許せる、許してくれる。
運命なんて安い言葉は使いたくないけれど、一緒になる運命なんだと思う。
いつもと同じ日常
将来何の役にもたたなさそうな授業を抜け出し、部室でデータの処理に追われた。時間が来て部員が集まれば楽しい時間。
その後はまたデータ処理。
部室が空っぽになり、空が明るさを失えばそろそろかと真っ白な携帯を取り出す。
履歴には見慣れた番号。数回のコールですぐに繋がる。
これが、日常
ちらりと時計を見ればまだ6時を過ぎたところだった。外は驚くほどの闇をたたえている。
「…?」
まだ暗くなるには時間があるとドアを開け外を伺えば、急な雨。それも、所謂本降りというもので既に地面は元の色より深みを帯びていた。
こんな日は、彼を呼ばない。
バイクを走らせる彼にとって雨は大敵。以前、土砂降りの中呼びつけその途中転倒し大怪我をおった彼を知っているから。
自分の我が儘で、彼に傷がつくのは嫌だった。
「…チッ…しゃーねえ…」
手にした携帯は、やはりすぐに繋がった。
『もしもし?ヒル魔?今日はやけに早いな』
「糞奴隷、今日は迎えはイラネー」
それだけ告げて電話を切った。
迎えに来ない日は、彼に会えない。
ただ、それだけの事なのに、心はぽっかりと穴があいたようだった。
たかが、半日会えないくらいなんだ。アメリカ行ったときは40日会えなかったんだから。
自分に言い聞かせて、パソコンのキーを叩いた。
「……糞…」
タイプミス、データも頭に入ってこない。苛々しながら、ぬるくなった珈琲を一気に飲み干した。
「…不味っ…」
彼が煎れる珈琲は、ぬるくなっても美味しいのに
彼がいないだけで、こんなにも違う
傍にいない事が、苦しい
「……は、ばしら…」
会いたい
想った瞬間、部室のドアが少し乱暴に開けられた。
吃驚して其方を見ると、そこには愛しい
「…カメレオン」
「カッ!誰がだ!」
黒い大きめの傘をバサバサとふりながら葉柱がやって来た。
「おい、何しに来た?まさかテメー、バイクで」
「安心しろ。バイクは学校だ」
バイクは雨に当たらぬよう学校のガレージに入れてきたのだという彼。
バイクなしでわざわざ此方へ何しに来たのだろうか。
「傘、どうせ持ってないだろ?」
だから、迎えに来た
彼は、当たり前だとでも言いたげな表情で告げた。
「…バイクなしでどーやって帰んだ…」
そう言いながらもパソコンをシャットダウンさせ帰り支度をする。椅子から立ち上がれば「もう帰る?」と葉柱が聞いてきたから、軽く頷いてからもう一度聞いた。
「糞!だから!どーやって帰んだって聞いてんだ!」
ギロリと睨み付ければ、葉柱はニヤリと笑って「電車」と言った。
電車で家まで30分。葉柱の家は更に15分かかる。こんな雨の日に、わざわざ45分もかけて家まで帰るのだろうか。
「…時間かかるだろ……テメーのが家、遠いし…」
そう言うと葉柱は困ったように笑った。
「ヒル魔の家、泊まっちゃダメか?」
外に出る自分に合わせ葉柱もそれについて歩く。雨は先程より少し強まっていた。
ダメか、なんて聞かれてダメだなんて言える筈ない。
わざわざ迎えに来てくれたのだ。白いパンツの裾が雨と泥で少し汚れていた。
そうまでして、自分を優先してくれる葉柱。
嬉しい
素直に口に出せない代わりに、一緒に入った大きな傘に隠れてキスをしてやった。
「ヒル魔!?」
葉柱は照れながら焦ったようで、あたふたとしていた。
「……早く帰ろーぜ」
そして、このあふれ出しそうな想いを掬って欲しい。
好きだと素直に言えない自分が腹立たしいしもどかしいけれど、腰に回った腕にほんの少し勇気を貰った。
「早く帰って、あっためてくれんだろ?」
雨のせいで凍えそうな体を、彼の愛情で暖めて欲しい。
「カッ!」
ニヤリと笑えば、葉柱も少し笑った。
これからもずっと傍にいたいし、いて欲しい。
それがきっと、運命だから
四六時中傍にいたい
『01』の荊佑様から相互リンク記念のルイヒル小説いただきました。
雨の日に呼ばない蛭魔の優しさと、傘を持ってないだろうからと迎えにきた葉柱の優しさ。どちらも沁みますね。
一緒に居るのが運命ならば逆らわなくていいでしょう。ルイヒルは永遠です!(笑)
荊佑様、甘いお話をありがとうございました!