つぼみ

□つぼみ 本編
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また、だ!!!

少し感傷的な気分に浸りながら森を抜けると、崖と真っ青な海が視界を埋め尽す。お墓の場所は崖の隅の方に隠れるように作られており、結構きわどい所までこなければ分からないようにしてある。そして僕が最近頭を痛めている問題、それはこの墓にあった。別に毎年壊されている、とかそんな乱暴なもんじゃない。その真逆だ。僕が来る頃にはきちんと掃除がされていて花が添えられている。しかも、毎年1輪だった花が2輪、3輪と増えていっているのだ。今年は6輪。

「去年と同じ、か。」

今年は増えてはいないんだ。そう一息ついたときだった。目の前であり得ない光景が広がった。
強い風が吹いた、と感じた次の瞬間、一輪の花が自分の頭上を飛んでお墓に供えられたのだ。不思議なことに相当強い風だったにもかかわらず、お墓に供えられていた花は一輪たりとも動かず、花びら一枚も散っていなかった。僕の持つ花束からは多くの花びらが舞い散ったというのに。
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