企画

□戦火の果て
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今日は酷い雨だった
どんよりと重い暗い雲が
私たちの頭上に覆い被さる
だが私たちはそんなものを見ない
見るのは足元の
息をしない存在だった

後ろから胸に銃弾を一発
位置的には
即死の位置だった

目を見開いても
どこも見ないその死体を見つめ
私と
隣に立つ大きな彼は
口を閉ざす

その死体は
私たちの上司だった

彼が
死体に何をお世話になったかは
知らないけれど

捨て子だった私は
死体の彼に拾われて
戦えるようにまで
育ててもらった

人にどれだけ殴られても
次の日には復活していた
彼も
たった一発の銃弾で
いとも簡単に
この世にいられなくなるらしい

何を喋ることなく
私たちは同時に
踵を返した

血を浴びた髪が
顔に張りつく

血に染まった手が
顔を覆う

ふと背中に
暖かい何かが触れた

私だけではだめだ
そう思って
私も彼へ手を伸ばした

私をなだめる彼の背中は震えていた

(戦火の果てに何があるのかしら)

お題お借りしました→唇からロマンチカ

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