荒川
□融解
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白
灰色
黒
私の目の前は気づいたら色が移り変わっていた
その黒に
意味も見つからないまま畏怖の念を感じ
思わず自分のチェロを抱き締めた
気を落ち着かせる為にチェロの弦を弾いても
音として耳には届かなかった
代わりに雑音
ザー…ザー…
時間が経てば耳元で流れていた単調な音も
遠くに離れていった
もう一度弦を弾く
今度は声だ
何を言っているのだろう
そもそも聴いていいのだろうか
ぽたり
チェロに水滴が付いていた
空とは言えない黒を仰ぐ
ソコには黒しかない
もう一度チェロを見やる
自分が濡れていた
足を動かそうと考える
動かない
下を見た
自分の足が見えなかった
不意にチェロの音がする
床に落ちていた
自分の手がなかった
闇に飲み込まれる
冷静に考える自分を
ワタシは闇の中から見ていた