荒川

□覚醒
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(リク視点)

「ニノさんったら常識人!!」
迷子の子犬が自力で帰ってきたような心境に俺は思わず涙が出た。
「ニノさん、中に入って少し待っててください!!」
そう告げると俺はバスタオルを取りにその場を離れた。


「ニノさん!」
「おぉ、リク」
戻ってくると、一人増えていた。
思わずフリーズ。
とりあえずビタビタなニノさんにバスタオルを渡す。
そして足下を見た。
「あの〜ニノさん、この人は?」
俺の足下というか、住人に囲まれた中を覗くと女の子が眠っていた。
頭をガシガシと拭きおえたニノさんは
「拾った」
とだけ返した。
頭の中で幾つかの質問が流れる。
どこで
どうして
もう一枚タオルを持ってくるべきか
この子が抱えているのはチェロか
起こすべきか
とりあえず河童を河に飛び込ませるか
女の子の頬をつついている星を止めさせるべきか
女の子に銃を向けているシスターを止めるべきか
注意したにも関わらず白線を引いて移動するシロさんをもう一度注意するべきか
俺の腰をグイグイ押してくる兄弟を止めるべきか
チェロ重くないのか
「…何か後半違う気がする!!」
「「「ぅお!?」」」
いきなり叫んでしまった俺に皆は驚いてしまった。
「どうした、リク」
「思わず驚いちまったじゃねえか」
「おいおい、いきなり叫ぶなって」
「「どうしたの、リクさん」」
「危うく引き金を引くところだった…」
「シスターその武器仕舞って下さい!!」
駄目だ。
埒が空かない。
まずは気を落ち着かせようと深呼吸。
よし。
「とりあえず、皆さんその子から離れましょう。シスター、銃を向けないで下さい。星、つつくの止めろ。兄弟、俺の腰を押すな。シロさん、それ以上動かないで下さい。それからニノさん、そのタオル使い終わったならこちらへ」
俺はニノさんからバスタオルを受けとる。
「え〜俺には?俺には何か指示ないの〜?」
「河にでも飛び込んでろ」
口に人差し指を当てくねってる村長を視界から抹殺し、俺はもう一度バスタオルを取りに行った。
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