私は割と、親には悪いけど、かなりデブスだとわかっている。
生まれた頃からすでに体重は平均より重く、さらに親に甘やかされて育ってきた私は好きな物を好きなだけ食べて生きていた。無論、運動なんて大嫌いだ。
いや、別に親が悪いわけではない。
結局のところ自分が制御していなかったのが悪いのだと思っている。
しかし、私は自分に厳しくするような性格ではなかったために、体型をコントロールすることは一切せずに今に至っている。
もちろん幼少の頃からすでに太っていた私は異性から散々馬鹿にされてきた。
笑われてきた。
が、私は一切それに対して、まるでか弱い乙女のように、心を痛め、涙した記憶はない。
むしろ、男勝りな性格といえば多少は聞こえがいいかもしれないが、要するに負けず嫌いのがさつな性格なために、馬鹿にしてきた奴に対抗するような人間だった。
なぜか人を馬鹿にする奴らはどの年代にもいるようで。正直今でもいる。不思議だ。
けんかもした。悪口も言い合った。
対抗するために、だんだんと私は口が悪くなっていき、なぜか身だしなみに気を使うこともなくなった。
服なんて、着れりゃいい、とか思ってたり。
もちろんそれは今にもつながっていて、二十歳を過ぎたにも関わらず普段は化粧もしていない。
初めて化粧したのは、成人式の時だったか。
はじめはそもそも参加するかどうかすら考えていたが、さすがに親に説得されては振袖を着るしかない。化粧もするしかない。
鏡を見た私は馬子にも衣装という言葉すら当てはまらないほどにひどいなとは思った。
そんなこんなで生きてきた私は、到底恋愛には程遠い存在で、そもそも今まで恋をした記憶がない。
ぶっちゃけ異性はみんな敵だった。
変に捻くれて成長したせいか、褒め言葉はみんなお世辞だと思っていたし、もし、仮に、奇跡的に自分のことをそういった目で見る人がいた場合、その人はとんだDB専か、あまりにももてなくて性別が女ならなんでもいいという最終手段を取るしかなかった人か、あるいは相当とち狂った性癖の持ち主か、だと思っている。

「俺は、お前みたいなやつに初めて出会った‼︎こんな、ニノにも負けねぇくらいに綺麗なやつに‼︎俺は、ニノが好きだったはずだ‼︎だが、お前と出会った瞬間の、この胸のときめきを恋と呼ばずになんていう⁈好きだ‼︎愛してる‼︎俺の恋人になってくれ‼︎」

誰かこの目の前の星が言ってることをわかりやすい日本語に訳してくれ。

その日、私はたまたま河川敷を歩いていた。
そして、見事足を滑らせ、前日に大雨が降って水の量が増えていた荒川にダイブした。
生きていたのが奇跡だと思う。
目が覚めた時、私は訳のわからない格好をした人たちに囲まれていた。
ちなみに川に流されていたのを助けてくれたのはニノである。
ぶっちゃけ頭に疑問符が飛び交いながらも、とりあえずリクルート、通称リクと呼ばれる奴の家で、その日を過ごそうかと決まった時今まで黙っていたその星はいきなり叫びだしたのだった。

「…………は?」

本気で日本語がわからなかった。
その時の私は、本気で人を蔑むような目をしていたと思う。

「うっ…その目で俺を見つめないでくれ‼︎俺が、俺でなくなってしまうような気がする‼︎はぁ…その綺麗な瞳で見つめられると、身体の奥から熱が出てくる…‼︎どうすればいい、どうすればこの気持ちをお前に正確に伝えられる…⁈」

隣でリクルートが、完全にこいつキャラ崩壊してる…。口調すら違うぞ。などとつぶやいているのを横目で確認する。
その間にも星はブツブツと何かを言いながら、はぁはぁと息を荒げ、こちらを見ている。
残念ながら、今まで恋をしたことのない私には、そんな愛の告白など本気で捉えることができなかった。ましてや初対面だ。というかこの瞬間私は星を変態だと決めた。
ただ、問題なのは、私にそいつのあしらい方についての知識がなかったことだ。
その日の対応を間違え、その後、星からstk行為をされ、毎日愛を囁かれることになるとは思いもしなかった。

「好きだ‼︎愛してる‼︎その蔑むような瞳でも俺を見てくれるなら今日も俺は生きていける‼︎だが、もし願いが叶うなら、俺と付き合ってくださいぃぃっ‼︎」

誰か変態の対処法を教えてくれ






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