160万ヒット御礼企画

□全ては彼の手のひらの上
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魔王の城――略して魔城では、今日も今日とて魔王が暇を持て余していた。

「あーあ、つまんね」

独り言にしてはでかい呟きを放ちながら、読んでいた書物を無造作に投げ出し、机に脚を乗っける。

その姿は誰もが恐れる極悪非道な魔王とはほど遠く、勉強に飽きた中学生といった方がよほどしっくりくるものだった。

古くからの魔王の側近、口から炎を吐き出す翼竜の爺は、嘆かわしい…とため息を零す。

「魔王様、だらしがないですぞ。形だけでもいいですからシャキッとなさってください。そんなことでは下の者に示しがつきません」

「だってよぉ、暇なもんは仕方ねぇだろ。人間相手にしても弱すぎて話になんねぇし。かといって魔界で俺に刃向かう奴はいねぇだろ? これを暇と言わずにどうするよ」

「お気持ちは分からなくもないですがな。しかし魔王様、ご安心ください。この爺めが朗報をお持ちしましたぞ」

「…ほぉ? 聞こうじゃねぇか」

依然としてだらしない姿勢を保ちながら、心持ち身を乗り出す魔王。

少しは興味をもってくれたらしい。

爺は内心ほくそ笑みながらその巨体には似つかわしくない丁寧な動作で大きめの羊皮紙を取り出した。
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