160万ヒット御礼企画
□或いは、ただの好奇心*
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その日、寺沢は猛烈に甘いお菓子が食べたくなって、お気に入りの洋菓子店に足を運んだ。
思えばその行動こそが、これから起こる騒動の元凶だったのだ……
「お、寺沢じゃねぇか」
ケースに陳列されたケーキを真剣な眼差しで吟味していた寺沢の背後から、耳に馴染みのある声がかけられる。
振り返って確認するまでもなく、すぐにその人物に見当をつけた寺沢は、挨拶代わりに軽く手をあげた。
「お前も来てたのか」
「今日新作が出るって聞いてな、甘党としちゃ黙ってらんねぇだろ。……まぁ、売り切れちまったみたいだけど」
こういう時の女のエネルギーって怖ぇな、なんて笑いながら、不知火は寺沢の隣に立ってケーキを選び始める。
あれこれと会話を交わしながらケースを覗き込む姿は仲のいい男友達そのものだったが、実は二人の関係はそんなほんわかしたものではない。
不知火は霧島組と因縁のある不知火組の若頭で、これまで何度も拳を交えたことのある相手。
本来ならば、目が合ったその瞬間に殺し合いが始まってもおかしくない間柄なのだ。
しかし、寺沢は以前からプライベートで不知火と交流があり、メル友でもある。