長編小説

□赤き咎人 W
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“ナナシマ”と呼ばれる、七つの島が連なる列島の上空を、虹色の翼をもつ巨鳥が飛びまわっていた。


ナナシマは本土から遠く離れた海上にある。
本土、ナナシマ間の“空を飛ぶ”や”波乗り”での行き来は不可能なため、移動は船に依存している。その船も不定期なものであり、本数も少ない。

そのため、本土の情報はナナシマには入りにくく、その逆も同様。
つまり、隠れて何かを行うには絶好の場所なのだった。


「ホウオウ、”聖なる炎”だ!」


空を自在に飛び回っていたホウオウの耳に指令が届く。
ホウオウは声のした方――自分の眼下にある岩山に立つ一人の人間に目を向けた。

そのとたん、その瞳に怒りの色が宿る。


「ホウオウ!言うことをきけ!!」


なおも自分に向けて命令を発するその『人間』に向け、ホウオウはその怒りのままに灼熱の炎を放った。


「!!!!」


劫火がその『人間』を包み込む。
炎は燃料もないままにしばらく燃え続け、ようやく消えた時にはそこには焦げた岩が残るだけだった。
ホウオウは満足げに瞬きし、ようやく得た自由に開放感を覚えながら飛び去ろうとした。


しかし。



「逃げられないわよ?」



目の前に、先ほど焼き払ったはずの『人間』が現れる。

ホウオウが再び炎を吐きだす前に、『人間』はその手から何かを放った。


弧を描き、飛んでくる球体。
それは、自分の体に触れた瞬間に強烈な光を放つ。

その光に抗うことができないまま、ホウオウはその光に捕らわれていく。


『――――ッ!!!!!!』


声にならない叫びを残して、鮮やかな紅色は青い空からかき消えた。





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