長編小説

□赤き咎人 W
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「わぁ…何度来てもここはすごいなあ……!!」


イエローとピカが出会ってから数日後のある日。

彼らは崩壊したトキワジムの前にいた。
激しい戦いの跡地を見て興奮したイエローが、鞄を放り投げて瓦礫の中に分け入っていくのを見て、ピカはイライラとしっぽを振った。


まず、イエローには旅に出た経験が無かったため、旅に出ることを決めてから荷物をまとめるのに数日がかかった。
今日ようやく出発できたと思ったら、彼女はピカが驚くほど歩くのが遅かったのだ。

レッドが一日で歩く距離を、イエローは二、三日かけてやっと進めるのではないだろうか。
未だにトキワを出られていないことがピカには信じられなかった。


「わぁ、もう草が生えてきてる。自然ってすごいなぁ」


イエローはしゃがみ込み、足もとから生える草花を覗き込む。


……エンジュシティでの戦いからかなりの時間が経過した。
ここで起こった戦闘はさらにそのずっと前。

血の跡は森に降り注いだ雨が洗い流し、瓦礫の間からは青々とした雑草が伸びている。

放っておかれれば、ここも緑に覆われ完全に森の一部となったのかもしれない。
しかし、ここはジムであり本来トレーナーの育成に必要とされる場所だ。
そのうち協会により、ジムは元通りに修復され、新しいジムリーダーが配置されるだろう。


もっとも、イエローにはそんなことは分からなかった。
今はただ森の力を感じとって、命というものの強さに心の中で驚嘆の声を上げていた。


瓦礫の山をよじ登ってみると、崩壊したジムの様子がよく見渡せた。
床だった地盤は大きくひび割れ、ジムの備品であっただろう幾つかの道具や、あちこちが欠けてしまった石像などが瓦礫の隙間から覗いている。

その間に何か光る物を見つけ、イエローは身を乗り出してその何かを覗き込もうとしたが、同時に足もとの瓦礫が崩れ、バランスを崩した。


「わぁ!?」
「!!」


イエローを待ちながら戦いの跡地を見つめていたピカはその声にハッとし、瓦礫の山を駆け上がった。
比較的足場のしっかりした、大きめの瓦礫の上に飛び乗ったピカは、瓦礫の間に尻もちをついた状態のイエローを見つける。

顔をゆがめて腰をさすっているが、どうやら大した怪我はないようだ。


「あはは……、なんかキレイなものが落ちてたから、つい…」


イエローはなにかガラスの欠片のようなものを拾い上げ、ピカに見えるように手の平にのせて差し出してきた。

それは日の光を受けて輝いていて、確かに宝物のように綺麗だった。

普段のピカならば一緒にはしゃいでいたかもしれない。
しかしその行為は、思うように進むことが出来ずにいら立っているピカの神経を逆なでした。


『ピカァ!!』


ピカは瓦礫の山を滑り降り、イエローのすぐ側に転がり込む。
立ちあがろうとするイエローに飛びかかると、ピカは電撃を放った。





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