清晨-セイシン-のマリス
□最果ての巨大都市
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サンディアの首都から最果てにあるゴーグの街は、もともと峡谷にあった街で、ずっと昔はゴージと呼ばれていたらしい。
しかし、長い年月をかけ、砂に埋もれた街はいつしかゴーグと呼ばれるようになり、突然湧き出た水のおかげで豊かな水源地として再度大きく発展してきた。
砂の国、サンディアにとって水はとても貴重なもの。ゴーグにとっても異論ではない。
ゴーグの街は大切な水を守るため、巨大な塀でぐるりと街を囲み、出入口には常に見張りを立てて人の出入りを厳しく監視していた。
「水じゃなくて、何か別のモノを守っているのかと思った。」
フゥフィはユスハクから説明をしてもらったが、巨大な塀の冷酷な佇まいに何か胸のざわめきのようなものを感じていた。
「別の物?」
「よく、分からないけど…」
長い旅路の途中で、ユスハク一段とはすっかり打ち解けてしまい。いつの間にか、敬語が抜けていた。
父親がいればこんな感じなんだろうか。と思う瞬間もあった。
だが先の事を思うとそれを口に出すことができなかった。それは、ユスハクも同じだったがお互い深く話をすることもなく、その思いは胸にしまったままだった。
ユスハクの部下が、市内に入るための許可をもらいに行っている間、他愛のない会話をしていたが、どうやら許可が取れたらしく、門の下で大きく手を振っているのが見えた。
「いいか、二つの約束を守ってくれ。一つは、我々の目の届かない所へ行かない事。もう一つは、決してその髪を人前で晒さない事。どちらも、フゥフィの身を守るために必要な事なんだ。いいな?」
ユスハクは、市内に入る前にフゥフィとそう約束を交わした。フゥフィが小さく頷くと、一行は連なって街を目指す。
もっとも王族の目が届きにくい、最果ての巨大都市の中へと…。