清晨-セイシン-のマリス

□始まりの星
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「如何なさいました?」

深くため息をつきながら薄暗い廊下をゆったりとした歩調で進む王ガルスに声をかけたのは、白い服を身に纏った青年だった。

青年のキラキラと輝く月色の髪が夜風でふわりと揺れる。風の導くまま、ゆっくりと王に近付くと、

「お前のいう通りだった。」

と、王は力なく声をもらしてきた。

「やはり…
兄上はそんなに私が憎いのでしょうか?」

まだ幼さを残す青年は、自分の予言通りやってきた兄を思うとどうしようもなく悲しくなっていた。

「そうではないと言っていたが…」

そうでなければ、何故あんな馬鹿げた事が言えるのか…。

ガルスは言い様のない悔しさと悲しみでどうにかなりそうだった。



7年前、シュカリー族の族長が亡くなり『導師』の椅子が空いた。

幼い頃より星を読み、正確に予言を行っていたイリアスが、その座につくものだと誰もが思っていた。

しかし、その椅子に座ったのは、弟のルルス。

族長が亡くなる前から予言を外すようになったイリアスよりも、次第に星読みの才能を開花させていったルルスの方を選んだのだ。

予言を外し、根拠のない嘘をつくようになったイリアスを見ていられなかった。

周りから孤立していくお前を助けたかったんだ。

だから『導師』にはなれなくとも、その知性を生かす『老師』の役職を与え、お前の望む事は出来る限り叶えてやってきたつもりだ。

「何が気に入らないのか…?」

『子供を諦めろ』

俺が言うならまだしも、お前の口からそんな言葉を聞くとは思わなかったぞ。

握りしめた拳を思い切り壁にぶつけた。

壁には大きく傷が入り、小さく広がったヒビからパラパラと欠片がこぼれる。

「何かを得る時には、何かを失うものだと、先代『導師』が言っておりました。

正しく、今がそうなのかもしれません。」

ルルスは悲しみから目を反らすように静かに瞼を閉じ、諭すように優しく声をかけた。

「…そうか。
お前が言うなら、そうなのかもな。」

ガルスは、そう言うと、何かを決したように産声の聞こえる部屋に向かって再び歩き出した。



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