籠国風土記

□籠の中
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祠の横には掲示板のようなものがあり、そこには何か紙が貼ってあった。

墨で書かれたその文字の横には、人の絵が描かれている。

「皐月から水無月、
 つまり5月から6月の間に
 変な服装をした子供が現れたら、
 謝礼をあげるから
 直ちに城まで報告するように。

 そんな内容が
 ここには書かれてる。」
「変な服装って…」

墨で描かれた人の絵。
よく見れば着物ではなく洋服を着ていた。

「僕たちの事だよ。
 この世界にいつ来るかは
 分からないけど、
 現れる日付は
 5月下旬から6月中旬までに
 集中しているみたいで。

 お殿様は血眼になって
 僕らを探している。」

どうして…?

そう思って樹を見上げた。

「金色の国の使者だと
 思われているみたい。

 金色の使者を家に招くと
 その家は栄えるらしい。

 だからお殿様は
 僕らを見つけたがってるそうだよ。」

そんなワケないのに。と言って、樹は一人、祠に向かって歩き出した。

樹のあとを追いながら優太の事を思い出していた。

私の服を了承も得ず売ってしまった優太。

文句を言われたり、冷たくされたりしたけど、ちゃんとご飯も食べさせてくれたし、澪の着物のサイズが合わないと分かると、樹の所で着物を借りられるようにしてくれた。

「優太が着物を着替えさせたがった理由分かった?」

『お金が欲しかった』なら、手っ取り早くお殿様に報告すればいいだけの話。

何か少し悔しいけれど、

「わかった。」

優太の優しさは、すごくわかりにくい。

「できるだけ、
 向こうの世界の事は話さないようにね。」

小さく頷くと、

「あと、
 もし向こうの世界の事を知っている人や
 知り合いにあっても、
 向こうの世界の事やゆーた、まっつん、
 僕の事とか絶対に話さないでね。」

と樹が付け足した。

「なんで?」

そう問うと、樹は優しく、

「殺されたくないでしょ?」

と微笑んだから、それ以上何も聞けなかった。



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