月 夜 妖

□舞姫
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夜の闇が深くなると
何故か目が覚めてしまう。
小学校にあがった頃から
ずっとこうだ。

ある日
いつものように目が覚め、
いつものように意味もなく
天井の木の模様を
なぞるように眺めていると、
微かに何か弦を弾く音が
聞こえてきた。

外では蛙が集団で歌声を
披露し合っており、
どこかの家の飼い犬が
時折遠ぼえをする。

自然の音が
自然と聞こえるような
土地にある家なので、
カラスよけにはってある
テープに大きな虫が
当たったんだろうと思い、
その音が聞こえてきても
あまり気にすることは
なかった。

天井の木目をなぞるのに
飽きてきたので、
目を閉じ
再び眠りにつこうとすると、
今度はさっきの弦の音に加え、
太鼓を叩く音がしてきた。

弟が
ラジオでもつけっぱなしに
しているのだろうと
布団から出て、
二段ベッドの下に
寝ている弟の枕元をのぞいた。

しかし、
ラジオはなく
さっき聞こえた音も
しなかった。

頭をかしげて
眠りにつくため
再び自分の布団に
入ろうとした瞬間、
外の方から
今度は笛の音も聞こえてきた。

恐くなって、
慌てて布団に潜り込み
頭まですっぽりと覆った。

おかげで
さっきの不思議な音は
聞こえなくなり安心したが、
だんだんその音を
もう一度聞きたいと
思うようになってきた。

こんな時間に
一体誰がこんな音を
流しているのだろう。

見に行こうかな。
…でも、
オバケがいたらどうしよう。

そう思って、
首から上だけを
布団から出し、
目を瞑ったまま
耳だけを澄ました。
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