月 夜 妖

□もう一つの星
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昼間の男の人の話を
お父さんにも
お母さんにも
言わなかった。

言っても仕方のないことだと
生きていたこの11年間で
学んだことの一つだ。

僕はどうも
見てはいけないモノまで
見てしまうらしい。

お父さんにも、
お母さんにも
そんな物は見えないから、
言った側から
病院に連れて行かれることも
しばしばあった。

見えないモノは信じない。

つまらない人たちだと
思ったけど、
嫌いじゃない。

弟も最初は
見えなかったらしいけど、
いつの間にか見えるように
なってしまった。

『おにいちゃんありがとう』
と言われたことがある。

別に僕は
何もしていないのだけれど、
弟は僕のおかげで
見えるようになったのだと
思っている。

怖がりのくせに、
見たがりなのだ。

夜の11時頃、
宿題をしていないことが
弟のせいで
お母さんにばれてしまい、
ムッとした顔で
算数の教科書を眺めていた。

憎たらしい弟は、
ベッドの中で寝息を立てて
気持ちよさそうである。

「わかんないっ!」

と軽く叫んだ時、
窓にコツコツと
何かが当たる音がした。

虫が当たるにしては、
何度も何度も
規則的に音が鳴る。

なんとなく想像はついたけど、
開けようかどうか悩んだ。


明日は学校だし、

コツ、コツ、コツ、

宿題早くすませたいし、

コツ、コツ、コツ、

やってなかったら
お母さん怒るだろうなぁ…

コツ、コツ、コツ…


この分だと出て行くまで
音が鳴り続けるだろう
と思ったので、
窓を開けて顔を出した。
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