パラレル

□その一
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なんでも、あの将軍様を護り切ったらしい。
真撰組にも護衛を頼まず、松平のとっつぁんも一切詳細を知らず、本当の身内だけでお忍び観光ときた。
全くただでさえ治安が悪いというのに歌舞伎町をうろちょろとした挙句に大量の攘夷浪士に囲まれるわ、真撰組は一体何のためにあるのかと叫びたくなる。連絡が行き届く頃には、もう遅い。

以前にキャバクラか何かで知り合ったかなんとか、きっとその後の報酬が目的なんだろうけど、やっぱりあそこの一家は無駄に強いから。万事屋だ何だ知らないが、お人よしにも程があるが今回ばかりはそのキャラクターにも感謝だ。なんせ将軍様なわけだし。俺の命なんていくつ並べたって届きやしない。

そんな命を救ったのだから、そりゃあ昇格するわな。しかも一般人から幕臣に。…こちとら願い下げだっての。

「トシ、みんな顔は知ってるみたいたが一応自己紹介も含めて今日集まるから」
「…なんでアイツらなわけ…」
「前々から幕府から一目置かれていたからなァ…万事屋は昔攘夷派だったらしいし、新たな人材も必要だとかとっつぁんが言ってた」

はいはい、もうわかったよ。俺がいくら嘆いてもやっぱり幕府が一番ですよね。ご愁傷様、俺。

「えっと、ご紹介にあがりました坂田銀時ですー皆仲良くしてくださいねー」
「同じく神楽でーす、オイそこのドエス馬鹿覚悟しとけヨ」
「し、志村新八です…」

あの年少組はきっと見習い止まりだろう。いくら強いとは言え(チャイナの方だが)未成年に人殺しなんかさせられないし。総悟以外。
だが問題はあの銀髪だ。強いのは認める。戦闘に関しては頭も回るのだろう、きっと俺以上に。それが気に食わなかった。
アレが平隊士であることはまず有り得ない。かといって一番隊は総悟の仕事だし、他にも詰まっているし。

「ニコ中多串くーん」

歓迎会(?)も終わり、皆それぞれ仕事にもどるが、早速問題の万事屋に肩を叩かれた。

「…何か」
「俺さ、お前らと働くの本ッ当に願い下げなんだけど、なんせ給料いいからよォ」
「そんなことわかってる」
「違うって大事なのはここからだって」

俺も嫌なんだけどと万事屋がため息をついた。
んなもん俺の方が嫌に決まってるじゃねぇか馬鹿。いらん情報を持って来るな、俺の幸せだってもう崩れ落ちそうなんだから。せめてあと一時間くらい後に言ってくれたらよかった。そしたら一時間で今現在の幸せ噛み締めるから。

「俺、副長なんだって」
「…もっかい」
「俺、副長に任命されたんだって。ホラ、あの松平?とか言う偉い人に」
「…最悪しね馬鹿天パ」
「俺も最悪だよニコチンマヨ野郎」

…とっつぁんの馬鹿。
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