パラレル

□その十四
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アイツの考えていることが、わからないわけじゃない。うっすらとイメージできるのだ。近藤さんいわく俺達は似た者同士なので。

「ザキ」

俺は、万事屋の「好き」にどうやらすがりついていたらしい。今まで向けられたことがないに等しい、恋愛感情、だとかいうものに舞い上がっていたのかもしれない。
『助けてやるよ』
経験したことがないから、優しくさしのべられた手が、ものすごく怖かった。その手をとったら、もう真選組も自分の存在意義も消えてしまいそうで、恐ろしかった。

女を買ったのは、俺のためだと言った。その理由が、なんとなくわかってきている。

「ハイ、どうしました?」
「なぁ、万事屋って、あの後も相変わらずお盛んなのか」
「えっ…えぇ、まぁ何度か遊郭に行っているという情報はありますが」

バカなことをしようとしてるんだろうな、と。俺は、何度もそういうバカな男に触れてきている。本人は気づいていないかもしれないけど、かなり、俺に情がわいているご様子。

「遊んでんのかな、それとも経費使って何か手にいれてんのかな」

どう思う、ザキ?
ニヤリと笑ってやったら、急に引き締まった顔つきになって、背筋をぴんと伸ばした。さすが山崎、いい子。

「アイツにバレねぇように、な」
「わかりました」

好かれているのはとても光栄なことだ。それを、利用しないのはあまりにももったいない。俺は、そういうバカどもの想いを利用するのが、結構得意だったりするから。いい気は、一つもしないけれど。

バカども、つまり今相手をしている幕府の連中は、ずいぶん俺に夢中らしい。なんの自慢にもならないし、全くもって嬉しくはないが。
でも、そのおかげで、何度か無理なお願いを叶えていただいた。真選組が無事に存在しているのも、彼らの働きのためだと言ってもいいだろう。
万事屋に濡れ衣が着せれたあの事件だって、つい先日、俺の中に射精しながら、なかったことにしてくれた。

そう思うと、なんていい方々だろう。あの方々を消すのは、かなり残念だ。 でも。

―俺が、限界。

「総悟」
「旦那との恋の相談なんて受けやせんよ俺ァ」
「じゃあ俺と幕府のお偉いさんの恋は?」

自室で寝転がっていた総悟は、それは楽しそうに、悪者みたいな笑みを浮かべた。

「ついにやっちまうんですかィ」
「お前、なんか頼むことねぇか?もう今くらいから交渉しとかないと、ホラお前っていろいろ問題起こしてそうだし」
「そうだねィ、あの人らの拘束器具でも譲って欲しいや」
「形見にでもすんのか?」

それは嫌だなぁ、と総悟がけらけらと笑っている。優しいこいつは、協力してくれるみたいだ。
俺は、もういい加減手足を縛られるのは嫌だけど、山崎や総悟が、このことを微塵も知らないであろう近藤さんが、無事にいてくれるのなら、喜んで足を開くだろう。でも、万事屋はもう準備をはじめているし、総悟だって楽しそうだし。俺だってここまで頑張ったのだから、もうそろそろ休んだっていいでしょう?

俺には、俺なりの、言い訳ってものをちゃんと用意してある。なんの意味もなさないものだけど。
でも、今回だけは、許してほしい。連中を失って真選組に都合の悪いことが生じたら、近藤さんに申し訳ないけれど、今は近藤さんのことを一番に考えられない。真選組より自分の身体だなんで、またずいぶんと偉そうだなと思うけど、もう、あのただ痛いだけの行為は、嫌なのだ。
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