お話3

□坂田家オムニバス!!
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*大黒柱の持ち物


くぅ、と珍しい土方の寝息が聞こえる。今度の非番は無理やり押し付けられたものらしい。ゴリラの願いどおり、朝からずっとソファの上で寝ている。その様子を、向かいのソファに寝転びながら、銀時はずっと眺めていた。琴は社長イスをくるくる回しながら、その上で神楽の友達から貸してもらったという絵本を読んでいる。

ほのぼのとした、平和な昼下がりである。

「…っくし」

土方が小さくくしゃみをした。琴が顔を上げる。

「父上、お布団もってくる?」
「おーそうすっか、…あ、お母さんごと寝室行きゃいいのかな」
「起きちゃうよ」
「だよなァ…そうだ、琴、ちょっと手伝え」

ちょいちょいと手招きをする銀時に何を始めるのかと琴が嬉しそうな顔をして絵本を置いた。
ソファから立ち上がった銀時は、なるべく音を立てないように机を持ち上げて移動する。琴は、土方が起きていないかの見張り役だ。頭の上で両手で大きく丸をつくった琴の合図を見て、銀時は、よし、と敬礼をする。

「お次は、と」

向かいのソファを土方が寝転んでいるソファにくっつける。これで、即席のベッドができたというわけだ。
寝室から掛け布団を引きずってきた銀時に、琴はまだ満面の笑みで丸を出し続けていた。
しかし、嫁の寝顔を見れば、本当は寝ていないということなどわかってしまうのが旦那というもので。特に銀時の場合は。

すこしだけ、微笑んでいる土方が、顔を隠すように寝返りをうった。

「あーらお母さん、狸寝入りとはねぇ」

隣に寝転がって布団ごと抱きしめてやれば、くぐもった抗議の声を出す。

「ちょっとは俺の相手もしてくれよ」
「わたしもわたしもー!」

琴もソファに飛び乗り、銀時ごしに土方に乗っかる。
結局、広くつくった即席のベッドの半分に家族全員がぎゅうぎゅうと集まっている。なにをしてんだか、と銀時は小さく笑う。

大の大人が、坂田銀時という男が、たった二人の人間に、ここまで。
――それが、家族ってモンか。
あぁいいなァ、と土方の頭をよしよしと撫でてやる。こんなことで幸せになるのも、幸せにしてくれるのも、この土方からはじまったことだ。
恋人としての好きと、家族としての好きとが混じって、どうしようもなく愛しい。子供のときに味わえなかったこと、それは今になって後から後から銀時のもとにやってくる。

そんな家族の、大黒柱だってよ。

「…ぎんとき、暑い、やめろ」

明らかに稼ぎの多いこの土方を嫁にもらって、可愛い娘もさずかって、その家庭の大黒柱だって。嫁も娘も、大黒柱のものだって。

「…土方ぁ、銀さんは宇宙一の幸せモンだよ」

土方を抱きしめたまま、すんと鼻を鳴らす。

「…はあ?」
「あーっ母上、やっぱり起きてた!」
「こらこらこら琴!お父さんの上で動くなって」

腹を蹴られた気がするが、それも可愛い。
銀時は琴の身体を片手で持ち上げて、自分の隣に寝かせた。

「俺は大黒柱だからな、お母さんも琴も俺のだ。したがって川の字は両手に華のかたちが望ましい」
「だいこく?」
「坂田家で一番えらいってことだ、稼ぎとかじゃねぇよ、大黒柱ってのは一家の中心、つまりお父さん」
「ふうん」
「琴に言ってもわかんねぇよ」
「そういうお母さんはおわかりで?」
「ばか、そう焦んなくてもいいだろ」

布団から出た土方の顔は文字どおり、銀時の目と鼻のさきにある。綺麗だ。

「心配しなくても」

俺は、ずっとお前のモンだよ。

「んなこと、ずっと前からいやってほどわかってるよ」
「…なぁ、」
「ハイなんですかおとーさん」
「…いや、いいよ」

俺のところにきて幸せ?
そんなこと、聞かなくったって大丈夫。顔を見ればわかる。土方だって、わかっている。

「なーに、父上の母上の秘密のおはなし?」
「いーや。こっちきな、おとーさんがでっかいから琴の顔が見えねぇ」
「だっからお母さんよォ川の字は両手に華が」
「琴、おとーさんの上に乗っかりな」
「はーい!」
「あ、はんぶんだけな」

銀時の腹の上に身体はんぶんを乗せた琴、それにつづき、今度は土方が頭を乗せた。

「なんだこれ、大黒柱の有効活用ですか」
「大黒柱の持ち物は、おとーさんの上で大人しくしておきます」
「まーす」

銀時の呼吸で上下する琴と土方の頭、それは坂田家の、家に似ている。大黒柱を中心に、二人は銀時と共に上下も左右も前後もするのだ。家族は、いつだって一緒にいる。






****
あとがき

匡兎さま、リクエストありがとうございます!
オムニバス形式にしてみました♪家族パロは初めてなもので、いたらないところ多々あると思います…でも書いていてものすごく楽しかったです(*^^*) 素敵なリクエストありがとうございます。これからも銀土を見るとより夫婦見えてきますね笑

お子さんということで、琴を登場させてみました。いかがでしたでしょうか…?けっこう聡明な子になってしまったような汗 小さい子供の言動というよも難しいです(T^T) また子供観察をしておきます。

こんな感じに仕上がりましたが、受け取っていただけると嬉しいです。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
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