パラレル

□その三
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ついて来んな、と冷たく言い放つ土方さんに、それでも僕達はくっつく。我ながら根性があると思う。神楽ちゃんもまた然り。
なんて健気な少年達だろうか、でも土方さんがいつまでたっても心を開いてくれそうにないから。突っぱねられるのは大して嫌じゃない。今までかなりハードな生活を送って来ましたから。

「だーかーらっ俺に着いて来んな近藤さんのところ行きやがれ!」

なんで土方さんの後をついているのか。
わからないからだ。土方さんっていう人間全部。いつも鋭い表情していて、どこか近寄れない雰囲気をまとっていて。
ミステリアスなものには惹かれる、そう出来ているのだ、僕達は。別に血まみれの土方さんが神秘的って訳じゃないんだけど。

「その近藤さん、姉上のところらしいです」
「…万事屋は」
「銀ちゃん外回りでいないアル」

はぁ、と吐き出す息が白い。この人には子供の前で煙草を控えるモラルがないのか。
いや、案外どっか行けって遠回しに言っているのかもしれない。僕達くらいの少年苦手そうだし。真撰組に保父さん無理か、僕は赤ちゃんじゃないけれど。

綺麗な人だと思う。こんな餓鬼の目から見てもそうなのだから、実際ものすごく人を引き付ける人物なのだろう。副長のカリスマっていうやつにしても、普段の仕種なり言葉なりにしても。
…銀さんの目は、よく土方さんを追いかけている。無意識?でも口が馬鹿みたいに全開。情けないです、坂田副長。

「…俺に何か用かよ」
「ここ最近で真撰組の野郎達とは仲良くなったネ。後はお前だけアル、ドエス野郎は無視して」
「一応上司なんですから、少しは話しておきたいかな…と」
「今話した。満足ですか」
「何アルか、お前私のこと嫌いアルか!」
「そんなに突っ掛かってお知り合いになるモンでもねぇだろ」

そんなに拒絶するモンでもないと思うんですけど。
煙草を灰皿に押し付けて、ウンザリした表情で土方さんが行き場を失った手をふらふらさせている。しばらく視線を落としてから、口を開いた。

「言っとくけど、お前らただの平隊士だから。それも見習い。…入隊以前に面識があったからといって特別扱いは無理」
「でも腐れ縁だったのは事実じゃないですか」
「昔の恩を忘れたアルか!」

食い下がる僕達に、土方さんはぽかんとした表情を浮かべた。でもすぐに、目を細めて立ち上がる。
お母さんみたいな、そういう優しい目だった。初めて見る、土方さんの知らないところ。

「…お前ら、俺のこと好きなのか?」

首をちょっと傾げて、外に出て入って行った。
『万事屋と一緒』
最後に、少し笑ってそう言っていた気がする。

「っあーっと土方!罰金のアレですけど!」

勢いよく廊下を走りながら、銀さんが僕の横を掠って後ろからやって来た。

万事屋と一緒って、どういうことなんだろうか。もしかして、銀さんが無駄に土方さんを眺めているのは恋患い…なわけあるか!
普段あれだけいがみ合っているのに、お互いをなじっているところしか見たことがないのに、それはないだろう。ただ土方さんの整った顔に感心してただけなんじゃないのか。中々納得いかない。

「行っちまったか…」
「やっと帰って来たネ。罰金って何アルか?」

キキーッとブレーキをかけて銀さんが止まる。
あー、と頭をかいたのは、きっと都合が悪いからだろう。あの人の癖だから。

「土方君のテリトリィに侵入した罰金…みたいな?ただでさえあの子の領域は狭いってのにねぇ」

要するに僕達は、土方さんにかなりの無理難題を押し付けていたということだ。
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