パラレル

□その六
2ページ/3ページ

時々、凄く怖くなる。俺が?いや、土方君が。
確かに神楽にあんなグロいところを見せたのはいけなかったかもしれない。でも、あいつだってそれを覚悟した上で言ってきたのだから、それに関しては俺は何の責任も感じない。
それ以上に、土方が責任を感じる必要はないというのに。何をそんなに怖がる?別に土方からしてみれば神楽がどうなろうと関係ないじゃないか。ただの見習い、たとえ腐れ縁だろうが好きな相手でもない。

「それとも何でェ、変な情でも移っちまいやしたかィ」
「ありえねぇだろ、それ…」
「ですかィ?俺ァあの人は随分優しいお人だとは思うんですがねェ」

だからって、何もそこまで怒らなくても…って、何だか土方みたいだ。だからって万事屋は、だからってお前は、…そうやって自分のスタンスを変えようとしないのがあの子の悪い所。俺も同じく。
俺はどちらかと言うと、神楽の健気な言動に感動したというのに。もっとそういう目で見ることは出来ないのか。
誰だって入隊したからには、いつかは墓場を見ないといけないのになァ、と俺は沖田にこぼすのだ。思考が同じような回線である沖田は、よき相談相手でもあり、そのうち殺されるのではないかと不安になる相手でもあり。

「しょうがねぇでさァ、あの人俺が初めて人斬ったときも馬鹿みたいに悩んでたんだから」
「あぁそう」
「あぁそう、じゃねぇよ。何でもかんでも総悟に流しやがって」
「盗み聞きたァお行儀が悪いですぜィ土方さん」

どうせ聞かなくったって後で教えてあげるのに、色々と「のし」を付けて。そう沖田の顔に書いてある。ありもしない話も混ぜるのだろう。お前の魂胆はお見通しだコノヤロー。

「盗み聞きじゃねぇし副長が副長室に入って何が悪い」
「てことなんで旦那、俺隊長様なんでこのへんにしておきまさァ。…じゃ、ぐっどらっく!」

親指を立てた無責任な沖田はそのまま出て行った。あそこまで、とは言わないけれど、土方も沖田くらい楽に考えられないものか。やっぱり無理か、鬼なんだし。

「…で、反省したのかよ」
「うーん…」
「あのな、お前に言っときたいんだけど」

それでも、やはり俺が悪いのか。
終わりよければ全てよし、は結果がよかった時の言い訳に過ぎないのだろうか。結果が悪かったら、俺が腹を切ればいい、それだけじゃないのか。
だって結果がよかったんだから、終わりがよかったんだから、そんな格言だって出してきたって誰も異を唱えることはないだろう?とは言えない。ここに異を朝からずーっと唱えている奴がいる。

「今回はチャイナ一人だったし無事に帰って来やがったからよかったけど…もし眼鏡も連れて行って、二人とも斬られそうになったらどうすんだ。チャイナ一人ならお前が庇ってしねばいい。でも眼鏡もいる、俺は近藤さん護るし、総悟は前線だろ」

土方は、終わりが悪ければ、の話が大好き。

「…もし俺が頭おかしくなって餓鬼共に斬りつけたら…俺が前線で死んだら、お前はどうする」
「そんときは」

俺の家族は新八と神楽だ。これは一生変わらない。それなのに、気がついたらしゃべっていた。

「そんときは、新八でも神楽でもなくて、ゴリラ庇って死にかけてる土方を助けるよ」

助ける順番は、副長副長局長なんだろう?

「…なんで」
「わかんない。俺もしかしたら土方君のこと好きかも。本能的に護っちゃったり?」

そしたら急にゲンコツが飛んできた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ