お話3

□To hell with sex!!
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嫌がらせである。これは正真正銘の嫌がらせである。
パンクしたタイヤを見て、銀時はそう確信した。

土方と会った次の日のことだった。先日買ったはずのジャンプが丸ごと消えていて、冷蔵庫の中のいちご牛乳は全部飲まれている。社長椅子の足は折れ、木刀には変なラクガキ。新八と神楽に聞いても首を横に振るだけで、一切知らないと言う。
それにくわえて、屯所まで走って土方ときちんと話そうとした矢先に、愛用のバイクがこの状態だ。
さては沖田あたりの仕業か、「うちの土方さんがいながら」とそのうち斬りかかってきそうだ。もっとも、こちらの事情を全てわかってのことだろうが。そのうち嫌がらせとはいえないようなことがおこってしまいそうで恐ろしい。

「あれ、銀さんそれもいたずらされたんですか?」
「きっとバチが当たったネ、ろくでもないことしからヨ」

バチ、か。仕事をまっとうするのはいけないことか、とため息を一つして、これからどうするかを考える。屯所まで歩くのは別に構わないが、バズーカを向けられると帰りが怖い。いくら銀時でもアレに徒歩で逃げるのは難しいだろう。

「あ、いいところにパトカーこっちに向かってるじゃないですか、警察に頼んでみたらどうですか」

他人事のようにそう言って、新八は神楽と万事屋に入って行った。冷たい奴らだ。これだから最近の若者は、と銀時は老人のようなセリフを吐いて、行き場のないいらだちを彼らに向けるのである。
ちょうどそこへ、パトカーが通り過ぎる。

「…え…!?」

助手席から銀時の方を向く人間が一人。目が合ったのは一瞬だったが、その顔は一生忘れられないものになりそうなものだった。

中指を立てている。子供のようにべえっと真っ赤な舌を出している。楽しそうな目、バカにしたような顔。
そんな土方が、銀時の前を通り過ぎていった。

「…あ、の野郎…!」

嫌がらせは沖田ではなく貴様の仕業か!
走って追いかけようにも車には追い付かない。覚えてろよ!とパトカーに叫んで、万事屋にもどってソファに寝転んだ。

きちんと話すも何も、銀時に嫌がらせをして喜んでいる土方は誤解をしているのではないらしい。むしろ、この状況を沖田と一緒になって楽しんでいるようだ。憎たらしいことこの上ない。
いじけたようにふんと鼻を鳴らして、目を閉じた。たかが仕事だけでこんなくだらないことをするのか土方は。向こうがその気なら、本当に女を抱いてやろうかと思う。…耐えられないのは銀時の方だろうけれど。

でもこうやって心の中で土方に文句を言っていても、最終的に折れるのは彼ではなく自分なのだろう。そうやって割りきることができる自分は嫌いじゃない。
仕方ないか、と息をついて銀時はソファから立ち上がった。紳士の彼氏なら、これくらい笑って許してやらないと。

「うし、現行犯逮捕だな」

向こうが車だろうが関係ない。土方のことなら勘がきく。なにがなんでも見つけて首根っこ引っ張って万事屋に引きずってそのままお仕置きでもしてやろう。
途端にやる気がわいてきた銀時である。
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