お話3

□雪解け愛
2ページ/2ページ

銀色の髪に白い雪がつもっている。縁側に寝転んで手を伸ばしてみるが、雪は天パの髪に絡まってなかなか落ちない。それがなんだか楽しい。両手でわしゃわしゃとかきまぜてやると、やっと振り向いて笑った。

雪だるまを置いたのはやっぱり銀時で、縁側に頭をあずけながら雪だるま製作にはげんでいた。集中しているらしい彼に、気づいていないだろうとゆっくり近づいてみたが、結局土方が頭をぐしゃぐしゃにするまでは黙って雪だるまの口をつくっていた。どうやら部品はチョコチップらしい。縁側に並んでいる一つに目線を合わせてじっと見ていると、得意げな声が降ってきた。

「どう?意外に器用だろ銀さんも」
「あ、縁側座んじゃねぇよ濡れる」
「いやいやそれは無理だろホラ見て、俺雪まみれ」
「外にずーっと座ってたからだろ」
「そりゃ雪だるま職人は雪の上が職場だからな」
「なんで雪だるま」
「寒そうなとこで頑張っていらっしゃる副長様の応援」

だって応援団員は多い方がいいじゃねぇか、とまた一つ、新しい雪だるまを並べた。それといっしょに持っていた小さい箱からチョコを取り出してつまんでいた。誰かから貰ったものだろうか、いるか?と聞かれて、目はいらないと答えると銀時の手がおりてきて優しく土方の髪をすく。

「だな、俺いま口食ってるかもな」
「今夜あたり雪だるまに襲われる夢見るんじゃねぇの」
「えーコイツらに命の息吹きをくれてやったのは俺様なのに」
「くだんねぇ」

こんなくだらない子供騙しの雪だるまに、嬉しくなるなんて。
真っ白な雪だるまがキラキラと綺麗に光っていて、土方は、さくりとその頭をかじった。一瞬でとけた雪の味は残念ながらわからない。そのままぽりぽりとチョコの目と鼻と口を食べる土方を見て、銀時がコラ、と土方の頬に手をあてる。冷たい手にひくりと反応した土方が、毛布の中から銀時を睨んだ。

「雪なんか綺麗かわかんねぇだろうが、食って変なもん入ってたらどうすんだ」
「ハイハイどうしよっかなー」
「なに今の、なにその父親に反抗する娘みたいな態度」
「やっぱチョコ食べる」
「お、やっぱ銀さんの愛の味がしたか」
「冷たくて安いチョコの味」
「ひっでー」

けらけらと笑う銀時と一緒にいると、寒くない気がする。ついでに雪だるまも、強力な応援に思える。

「お前、でっかい雪だるまつくったことある?」
「なに、土方雪だるまつくりてぇの?」
「つくってるの見とく。寒いし」
「毛布もってる奴が贅沢な、つくる前にちょっと入れて、俺も寒い」
「やだ濡れてる」
「雪解け水だから大丈夫、舐めてみる?」
「なにが大丈夫なんだよ…あーやっぱ寒い冷たい出てけ」

土方をストーブの前までひきずった銀時が毛布の中で足を絡めてくる。ひんやりとした感覚にぶるっと震えて追い出そうとするにも、あったかいあったかいと頬をすりよせてくる銀時に自由を奪われてはただの人間カイロだ。
こんなに冷たい、こんなに身体が冷えきっているのなら、相当長い間外にいたのかもしれない。もっと早く気づけばよかった、とため息をつくと同時にスカーフの隙間から手を突っ込まれて、違う意味でため息がでた。もう片方の銀時の手はベルトに伸びている。相変わらずの男だ。

「…冷たいあと盛んな」
「土方が冷たいってことは俺はあったかいってことだ、今ものすごい人の役に立ってるよ、よかったねぇ」
「じゃあ早く雪だるまつくって役に立て」
「あ、そんな強力だった?ならよかった」
「別にそんなんじゃねぇけど」
「雪だるまつくって土方抱けたら安いもんだな」
「うわ最低」
「違うって、抱くってぎゅってするてこと、俺寒い日はそれでいいや、十分満足だな、うん」
「…俺は雪だるまないと無理」
「またつくりに来いって?わかってるよ」

なにもかも見通したような銀時の顔が、目の前にある。身体は冷たいくせに、頬が少し赤かった。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ