企画部屋

□即席幸福会場
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日頃から訓練を受けている。真選組の仕事は、もちろんテロリストから市民を護ることだが、その他に幕府の連中も護らなければならない。身体をはって。

「トシ!うえだ!」

土方の隣にはそれはそれはお偉い人がいた。もうヨボヨボのお爺さんだけれども。
杖がなければ今にも倒れてしまいそうなこの老人は、徳川の血筋らしい。もちろん、護るべき人物。
細くて、背も縮んでいて、ちょこんと指で押しただけで骨から崩れそうな老人だった。

土方は彼を護るべく、ちょうど彼の真上から落ちてきた物が彼にぶつかる前に、それをキャッチした。

「大丈夫ですか」
「あぁ、頭にあたってぽっくりいっちまうとこじゃった。ありがとさん」

歓声が上がった。しかし、それは「真選組の副長がお爺さんを救ったぞ」というものではなくて。

「ふっ副長がブーケをとったぞォォォ!!」
「…え?」

土方は自分の手元を見た。べつに、何のへんてつもない花束だ。
ただ、幕府関係の結婚式が、土方の見たこともない異国風のもので、その豪華なドレスを身につけた花嫁がなぜか投げたものだった。
最近江戸に入ってきた新しい結婚式の形式だ。場所も豪華なホテル。全員洋服。ここは本当に江戸かと土方は戸惑った。
結婚式に参列することは立場上何度かあったが、初めての「うえでぃんぐ」とやらは、土方には理解できなかった。だから。

「うぅっ…トシもそんな年頃か、幸せになるんだぞ…」
「旦那が泣いてよろこびやすねィ、土方さんが超積極的にブーケをとりにいったって聞いたら」
「は?どういうこった」
「副長、異国の結婚式では、花嫁が投げたブーケをとった人は次に結婚するっていうジンクスがあるんですよ」

土方は二、三秒考えてから、はっと頭を抱えた。

「へっ変なもんとっちまったァァァ!」




銀時は十円玉を指で弾いて上に飛ばした。その隣では神楽が謎の舞を舞っている。彼女いわく、「くじびきで一等があたる舞」なのだそうだ。果たして効果があるのかないのか。
かぶき町の一角に、宝石店ができた。そこの広告が、今朝万事屋の郵便受けに入っていたのだ。スクラッチ型のくじびきがついた広告が。

「いつまで続くんでしょうね、神楽ちゃんの舞…」
「つーかこれただのヨガじゃね?」

一等は「ペアリング一組選び放題」。これを当てて土方との結婚指輪を買うんだ、と大騒ぎした銀時と、なら全力でスクラッチしなくては、とテーブルに集まった従業員。そして、神楽の舞が始まったわけだ。

「よーし、これでいけるアル!銀ちゃん、削ってみろ!」
「おーけー、いくぞ?」

おそるおそる削っていくと、そこには――

「…あ、…あたった……」
「え?銀さんちゃんと見てくださいよ?」
「だって見ろよコレ…」
「…あたってるアル…」
「あ、ほんとだ…」
「おれ、土方と結婚するわ…」
「幸せになれよ、銀ちゃん…」
「土方さん万事屋住みですか、それとも屯所に万事屋ごと行きます…?」
「うちにきてもらおう、てか俺挨拶しにいかなきゃ…ってか、」

「あっ当たったのォォォ!?」

今日一番の叫び声はかぶき町に響き渡ったという。
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